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第8話 烙印
いつから、彼は僕に生活の全てを報告しなくなったのだろう。
高校教師をしている僕の姿を、彼もまたあざ笑っているのだろうか。
食事は相変わらず味がしなかった。
それでも彼のために分量を測り、作り続けた。半ば意地だった。僕は、一族の温情で私立高校の教師をしている、ただの二十八歳の男だ。結婚どころか浮いた話のひとつもない、うだつの上がらない男だ。
しかも、女性を抱くことができない。
ずっと隠し続けてきた性癖が、少しずつ腐ってゆくのを知っていた。
それが崩れゆくのを長い間、願っていた。
僕は出来損ないだ。
生まれてこなかった方が良かった人間だった。
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