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第3話

「で、俺が遅刻して教室に入ったら、後ろの方に一個だけ空席があってさ、……」  雨はまだまだ降り続いている。  信号が赤になって、すっと静かに停車した。運転うまいよな、といつも思う。 「その隣に座っていたのが……」 「ねえ」  たまりかねて口を挟んだ。  いや、今までよく我慢して聞いていたよ、俺。  三浦は驚いて、こっちを向いた。雨天のためか辺りが薄暗くなり、前の車のブレーキランプに照らされて、顔が赤い。 「その話、まだ続く? どういうつもり?」 「え、どうって?」 「お前に好きな人が居るってことはもう十分わかった」  三浦は神妙に頷いた。  探るような目でこっちを見ている。  その瞬間、予想が確信に変わる。なるほど、俺は牽制されているのだ。 「大丈夫だよ。別に、俺、邪魔したりしないよ」  普通の友達としてじゃない「好き」という気持ちは、相手に伝わってしまうのか?  気持ち悪い思念とか飛ばしてる?  普通に接してきたつもりだったんだけど、どうやら駄目だったらしい。 「まさか、こないだのアレ、覚えてないって言ったの嘘だった? もし気にしてるなら、誰にも言わないから大丈夫だよ」

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