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第4話

 信号が青に変わる。  ガラスを叩く雨をワイパーが流して、一瞬にして視界がクリアになる。  でも、車は動かない。 「青だよ」  後続車からクラクションが鳴らされ、三浦ははっと我に返ったようにシフトレバーを操作して前へ進んだ。  そして、車内には妙な沈黙が訪れた。  時折ばらばらと打ち付ける雨音が響く。本当に呆れるほどよく降っている。  その雨に紛れるような静かな声で、息が詰まるような時間は終わりを告げた。 「嘘ついたのは、ごめん。……凌にとって、こないだのは、無かったことにしたい感じ?」  さりげない言葉が刃物のように胸を刺す。  それを明らかにしなくてはいけないのか。 「無かったことにしたいのは、お前の方じゃないの?」  だからさっきから、「運命の相手」について蕩々と語っているんじゃないの?  三浦はとうとう、ハザードを点滅させて道路の端に寄って停車した。  降りろってこと、じゃないよな。こいつはそういう奴じゃない。突然突き放したり、急に気が変わったりすることはなくて、いつでもフラットで、一緒に居て安心できる。  それから真面目で、穏やかな見た目に反して案外こだわりが強くて、人の好き嫌いもはっきりしている。一度懐に入れたものには驚くほどに愛情を注ぐ。  そういうところが好きなんだ。

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