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第4話
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三十路を目前に控えても俺はモテ人生を謳歌している。
流石に街中でスカウトされる事は無くなったが、ホテルのラウンジやパーティへ出向けば誘われる回数は逆に増えた。大人の魅力が増したんだろうな。
あれから事業の方も順調に拡大し、更に趣味で始めたトレーディングが思いの外上手くいって、今じゃ働くどころか日がな一日ぼんやり過ごしていても、一生食うに困る事なんか無いくらいの資産を生み出している。
ーーと言っても、ぼんやり過ごすのは性に合わない。新たに興した会社の執務室を居場所にして、日中はそこで俺にしか出来ない仕事をしながら過ごすようにしていた。
ま、人生の勝ち組ってやつだ。
「ねぇ廉さん。たまにはボクと遊ばない?」
「だ〜めっ! おれとしよ。 ね、廉さぁん。 いいでしょ?」
「あらあらぁ。 廉ちゃんたら、相変わらずモテモテねぇ。よりどりみどりじゃないのぉ〜」
両サイドに可愛いボーイを侍らせて、コニャックを煽るのも様になってる。
「残念だが、俺は子供は範疇外でね。 もう少し大人になったら、考えてやるよ」
ええー、と頬を膨らますお子様達を、鼻であしらいグラスを空けた。
久々に気分がいい。
「ーー…なら、俺とはどう?」
背後から首筋をなぞる指をパッと掴んで振り向けば、妖艶な笑みを浮かべた綺麗な男が秋波を投げかけている。
へぇ…、この店、暫く来ない内にこんな美人が出入りするようになってたのか。
「どう? 俺でも、お気に召さない?」
誘い文句も板についてるじゃないか。
この綺麗な顔が快感に歪む様を、思う存分堪能するのも悪くないな。
「ーーー…いや。 気に入ったよ」
男の細腰に手を掛け引き寄せると、シナを作って凭れ掛かる。首に回された腕から伸びた掌が、スーツの隙間からシャツの胸板へと滑り込んできた。
その淫靡な駆引きに、サイドのボーイズから甘い溜め息が漏れた。
男が耳元で吐息混じりに囁く。
「あんまり優しくしないでよ? 俺、…激しいのがスキだから」
ふうん…。ヤル気満々て感じか。
「ああ…。 俺もその方が愉しめる」
こういうツンとした美人は好きだ。
甘ったるいじゃれ合いなんかすっ飛ばして、野獣のように互いを貪り合うのが、男と寝る醍醐味だろ。
マズいな…。本気でホテルに連れ込みたくなる。
「ーー……ねぇ。 はやく行こ…、」
ーーーーーピリリリリリッ!
胸ポケットから電子音が鳴り響いた。
「……悪い。 ちょっと失礼」
画面を確認しなくても分かる。
ため息を飲み込んで通話ボタンを押した。
『廉さんっ!? お腹すいたよー、まだ帰ってこないの!?』
周囲に漏れ出すくらいの大声で叫んでる。耳がキンとなった。
この野郎…。そんなデカい声で話さなくても聞こえるって、何回言えば覚えるんだ。
『ねえっ!聞こえてる!? オレもー、腹減って死んじゃうよー!!』
「うるせえっ! そんなデカい声出すんじゃねぇ!」
『ねぇ今どこぉ? マック食べたい! マックのポテト買ってきて!』
「バカッ! そんなジャンクフードは駄目だって言ってんだろ。 ちゃんといつもの弁当頼んであるから、俺が帰るまで大人しく待ってろ」
えー、また弁当?、等と文句を垂れる。言っとくがコンビニ弁当なんかじゃ無いぞ。ちゃんとした料亭の仕出し弁当だ。彩りも栄養バランスもちゃんと考えてある代物だぞ。
「あらあら…。あの子も相変わらずねぇ」
訳知り顔でニヤつくママを視線で制し支払いを済ませ、あ然としているボーイズと魅力的な美人男をその場に残し店を出た。
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