6 / 7
第6話
「ねぇ廉さん。 アイス、もう食べてもいい?」
「ん〜? ーーーおい、にんじん残すな」
「えぇ……。 にんじん、不味いんだもん」
「駄目だ。 食え」
……食い物を粗末にするガキも嫌いだ。
「食ったらイイコトしてやる」
箸で摘んで口元まで持っていく。
そんなに嫌いか、ってくらいしかめっ面しながら渋々口を開けた。空かさずその口に煮付けたにんじんを放り込む。モゴモゴと口を動かし、鼻に皺を寄せながらイヤイヤ飲み込んだ。
「うえぇ……。不味いぃ…」
あー、と口をパカリと空けて、ちゃんと食ったと見せてくる。
ーーーったく。
サラサラの髪を鷲掴んで引き寄せて顔を寄せ、パカッと開けた口の中にベロリと舌を挿し込んでやった。
びっくりして引っ込めた小さい舌を、絡め取り舐め回し、甘噛しながら吸い出してやる。
「ふぅっ…、ん、ンんん」
うん。煮物の甘い味がする。
「ーーーっぷは」
「鼻で息しろって教えただろ」
「い、いきなりするからっ! 忘れたのっ!」
「いつでも廉さんのモノになる覚悟は出来てる、って言ってたじゃねぇか」
「それはっ、エッチするのはいつでもいいって意味だろっ! ちゅ、ちゅう…、は、ちゃんと言ってからにしてよっ!」
「はあ? 何だそれ……、ーーーぷっ」
参った参った。 降参だ。
「わ…笑うなよっ! 何で笑うんだよっ」
あー可笑しい。
こいつと居ると飽きないな。言う事やる事、なんだってこうも目が離せないのか。
恋しくて愛しくて、ずっと側に置いておきたいと思えるような人に、出会う事なんかないのかもしれない。こんな俺にそこまで想わせる相手なんか存在しないのかもと、傲った考えをしていた頃が懐かしい。
「ははは。 ーーー なぁ…、梓」
普段平気な顔して『いつになったらエッチするの』なんて聞いてくるくせに、真っ赤になって『ちゅうは言ってからしろ』だと?
「なんだよっ、…もぉ」
この世にこんなに可愛い生き物がいたなんて知らなかったよ。
赤い顔をして唇尖らせて拗る仕草も、お前以外がしても何とも思わない。
「早く大人になれよな」
「ーーは、はあぁぁあ!? オレ、とっっくに大人ですっ! お、と、なっ!!」
「あ…、そ。 大人ならアイスクリームは今度から買わなくていいな?」
「え? や、ダメっ!ダメダメダメっ!ごめんなさいっ、オレまだ子供です! だからアイスは買ってください! ……てかもう、食べてもいい?」
ーーー このガキめ。
「子供じゃ、仕方ねえな。 食ったらちゃんと歯磨きしろよ」
「うん!」
あーあ。喜んじゃって。
俺とのイチャイチャよりアイスかよ。
ウキウキしながらカップの蓋を開ける横顔を、苦笑しながら眺めつつ弁当の容器を片付け風呂に向かった。
ともだちにシェアしよう!