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僕も凄く記憶力が良い。貫通工事は予定通り行うからね

『なんだか、頭と体がフワフワする。あと、思考が時々乱れる』 僕の涙返せとかケチな事は言わない。 酔って次の日になれば、記憶が抜け落ちているとかありえる。もしも記憶喪失タイプなら話を盛っても良いが、さすがに恋人を騙すのは気が引ける。 ――酔ってるからなんだと言うのだ。 海輝は立ち直りが早い男だった。 泣いて終わりにするつもりはない。 念には念を押さねば。 「今までの言葉忘れるなよ錦君」 『何を言う俺は記憶力が良い』 「僕も凄く記憶力が良い。貫通工事は予定通り行うからね」 『わかった』 「避妊具購入するから! キャンセルできないからね!」 『……うん。頼り切って申し訳ないが、準備は頼む』 あ、これは多分酔っても翌日覚えてるタイプだ。 そして酔いが醒めて恥ずかしくなって一人で悶えるのだ。 あぁ、可愛い。 想像だけでご飯が五杯くらい食べれる。 いや、炊飯器空っぽにできる。 「楽しみだな」 『俺も海輝に会えるの嬉しい』 「か、かわいっ……うぐっ胸が……っ!」

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