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モーセ気分で割れた海に両手を掲げ、悦に入った所でザバンと波にのまれた気分だ。
しかし、そんな海輝の聖人モードをぶち壊すのが錦である。
「駄目だ。目的があるのに睡魔に負けているようでは、今後の為にもならない」
しおらしいながらも、どこか切迫した口調だった。
「お前とスキンシップをする目的がある場合、その……一定時間になれば寝てしまうのでは、永遠に本懐を遂げることが出来ない恐れがある」
「うん??」
本懐?
何を話しているんだ?
「………無礼講だ」
己が聖人になった気持ちだと清々しささえ感じていたその矢先、錦の発言で脳味噌パーンである。モーセ気分で割れた海に両手を掲げ、悦に入った所でザバンと波にのまれた気分だ。
「覚えてたんだ」
動揺を抑えて穏やかな声を出す。
「俺は記憶力が良い、解禁するぞ」
「無理しないで」
「お前は忘れたのか?」
錦がごそごそと動き、スェットの裾を首までまくり上げる。
錦が、自らの手で肌を露わにしたのだ。
「ふご?」
この子何してんだ。
何が起こった。
乳首が見えたが、錦がそんなことするだろうか。
夢か?
目を閉じる。そして、開く。
「恥ずかしい」
恥ずかしそうに小さくつぶやく錦と、白い胸元。
小さな桜色の突起を目にして、海輝は思わず手で眼を覆う。
指と指の隙間から、きゅっと唇を結んだ錦と白い肌に可愛らしい乳首が見える。
目を瞑る前と後で見えた物は同じだった。
恥ずかしそうな錦と、乳首だ。
夢じゃ無い!
現実だった!
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