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トドメを刺してと君は言う【後編】 11
「…お前ら俺に跪いて頭を垂れろ」
「「はは~~~っ!!」」
「ブハッ!!!マジでやんのかよっ」
数時間後に帰宅した要は、俺たちの様子を見てドカッとソファに座ると、いきなりこのセリフを放った。
王様か!
いや……要の場合…女王様?
「うまく纏まったみたいでよかったな…暁人」
「うう~要ありがとぉ~全部要のおかげぇー!!!」
「おーよしよし……あ?なんだよ爽すげぇ顔してんな?」
「いや……お前らが友達だったことにも驚いたけどさ……あきが要を完璧に手懐けてることに最強にビビってる……我が一族始まって以来の獰猛なモンスターをここまで懐柔する猛者がこの世にいたとは……」
「……殴るぞ?」
「おっ前…相変わらずバイオレンスだな」
どっちかと言うと、俺が要に手懐けられてる側だと思うんだけどなぁ…?なんて考えながら、2人の顔を交互に見る。
言い合ってる言葉は結構強めなのに、2人の顔はとてもリラックスしていて優しい。どうやら、俺が思っていたよりずっと…爽と要は仲がいいらしい。まぁ…血繋がってるし小さい頃から交流あるみたいだから、当然っちゃ当然なんだけど、一緒にいるところを見るのが初めての俺としては……この光景自体、超新鮮。タイプの違う美形同士が並んでるのって、ものすごく目の保養。
やっぱ、血筋ってすごいなぁ……
「で?全部誤解だったんだろ?お互いに」
「まぁ…大体は?」
「うんっ!めちゃくちゃすれ違ってたけど、結局俺たち両想いだった!!!嬉しいっ!!」
「はぁーーー!…オイ見たか要……俺の天使が今日もかわいい…」
「うーわ……世界一うぜぇバカップル爆誕……」
口ではこんなこと言いつつ、要は俺の頭をポンポンと撫でる。それを爽が優しい目で見守ってくれていて…嬉しくてニヤけてしまう。
こんなに幸せなことがこの世にあるなんて……俺、知らなかった。
「爽…今後暁人のこと泣かせたらマジで絞め殺すからな」
「お前が言うとシャレになんねぇって……」
「シャレじゃねーし本心だし」
「シャレであれよ!!そこは!!」
「もーっ!爽も要も落ち着いて!!俺たちこれからはちゃんと仲良くするから!ね、爽!」
「………是非、性的にも仲良くし」
バコンッ
要は履いていたスリッパで勢いよく爽の頭を叩き、再びスリッパを履き直した。なんて無駄のない流れるような動き…!
「なんか……意外」
「え?」
「爽って……実は結構えっちなんだね?その、チョコレートの件の時ですらすごく紳士だったから…てっきり淡白な方なのかなって思ってて…」
「いや……むしろ、俺この1週間あの時のお前で抜きまく」
バコンッ!!!
「いい加減にしろ変態っ殴るぞ」
「オイ殴ってから言うな!」
「黙れムッツリ!」
「わー、それピッタリだねっ!爽ってムッツリだ!」
「……あ、なんかあきに言われるのは悪くないかもしんねぇ…」
「ねぇ…爽キャラ崩壊すごいよ?」
「暁人お前…こんなのが彼氏でいいのか?コイツ実は結構アホだぞ?」
「え…?……うん、幸せ…」
「あーーーっ!!……ダメだあきがかわいくて死にそう…」
「だーっ!!!クソがっ!!!家でやれバカップル!!!!」
爽はニコニコしながら俺を抱きしめ、ぎゅうぎゅうに締め付ける。嬉しいけど、ちょっと苦しい。
要はソファから立ち上がると、グッと伸びをして俺たちを見る。
「おら、もう帰れバカップル!作業の邪魔!!」
「……要」
「ん?」
「ありがとう……ほんとに……」
「あー……まぁ、親友のためなんで」
「………俺たち、親友…?」
「俺は…そう、思ってたんだけど?」
「………………わぁ」
「何その反応」
「………喜びの、わぁ?」
「ブハッ!!!お前のリアクション成長しねー!!!」
初めて会った日と同じようなやりとりに、要は大爆笑する。それを見て俺と爽も顔を見合わせて笑ってしまった。
要は間違いなく俺たちのキューピッドだ。一生…感謝してもしきれない。
「暁人」
「ん?」
「幸せになれよ…!」
その時の要の笑顔を、俺たちはきっと…一生忘れない。
「ただいま…」
「…おかえり、あき」
俺の呟きにすぐ隣から返事が返ってきて、嬉しくて笑ってしまう。
1週間ぶりに帰ってきた我が家に懐かしさが込み上げた。この家に初めて来た日が、まるで昨日のことみたい。
ここが本物の愛の巣になるなんて……あの時は想像もしてなかったな。
リビングに入ると、爽はすぐにキッチンに向かう。
「あき…紅茶淹れるから…ちょっと話そう?」
「あ……うん……」
「ん?どした…?」
「あの………爽の淹れてくれた紅茶飲むの……久しぶりだから……嬉しくて…」
たぶん、俺がストーカーに追いかけられた日以来だ。
俺が俯いていると、爽は不意打ちで俺のこめかみにキスを落とす。
「ん…っ」
「あき…、もう2人っきりなんだから…あんまりかわいい顔すると…襲うぞ?」
「えっ!?あっ…あのっ…」
「…ぶはっ!…動揺しすぎ!冗談だって!」
「そ、爽っ!!!」
「ほら、座ってろってすぐ行くから」
俺は促されるままリビングのソファに腰掛けて爽を待つ。最後にここに座ったのは……あの、チョコレート事件の時だ。
俺……ここで爽に……
そこまで考えて、頭をブンブンと振る。
やばい……!!思い出したら、めちゃくちゃ恥ずかしい…!!!俺、よくあんな大胆な言動出来たよな…!!
あまりの恥ずかしさに、しばらくソファでジタバタしていると、紅茶を淹れ終えた爽が歩いて来た。
「あき、お待たせ……って…なんだよ、真っ赤じゃん」
「あ………、何でも…ないっ…」
「………ふーん……?」
爽はティーカップを俺に手渡しながら、ちょっと意地悪っぽく微笑む。
爽ってば……俺が何考えてるかお見通しみたい。勘が良すぎて、嫌になっちゃう。
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