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トドメを刺してと君は言う【後編】 12

「それにしても……あきが要と仲良いなんて……俺的には青天の霹靂だったよ」 「……え?そう?」 「うん…今朝要から電話きた時はマジでビビった……だって、俺からしたら2人とも小さい頃から知ってて、全然別々に仲良かったんだぞ?そんな2人が大学で出会って友達になってるなんて、予想できる訳ねぇって」 「確かに……そっか…」 「要があきのこと知らせてくれなきゃ……俺たち……きっとお互い勘違いしたまま終わってた」 「……うん………、要は…俺たちのキューピッドだね?」 「ふふっ……だな?」 爽は俺の手をギュッと握って微笑む。 今日も今日とて、俺の許嫁様は最高にいい男だ。惚れ惚れしちゃう。 「あ……なぁ、要がキューピッドなら…恭介は完全にお邪魔虫だと思わねぇ?」 「…え?」 「考えてみたらアイツ…すっげぇ最悪のタイミングで俺たちの邪魔してたろ…意図せずだろうけど」 「………………うわ、ほんとだ」 「だろ?」 言われてみれば…… 爽が俺に好きな人がいるって思って身を引こうとしたのは、恭ちゃんが俺に好きなタイプを聞いたからだし…… 俺がこの家を出るキッカケになったのも、爽と恭ちゃんの電話だった…… 本当に……本人は意図せずにめっちゃ邪魔してるじゃん! 「……今度会ったら謝ってもらおっと…」 「ブハッ!!アイツなら喜んで謝りそう!」 爽はケラケラと笑いながら、以前の様に俺の頬を撫でる。相変わらず心地いい。 だけど、その手首が1週間前より少しだけ細く見えて……なんだか居た堪れない気持ちになった。 「………爽、ご飯……ちゃんと食べてた?」 「え?」 「痩せたよね…?っていうか……やつれた?」 「あー………、まぁ…あんま食べられなかったから……その、お前のこと……心配で」 「…っ!……爽、ごめんねっ…俺っ…!」 「いいって…お前もお前で色々葛藤があったんだろ?わかってるから…もういいよ……それに、あきも目の下のクマ…すげぇぞ?ちゃんと寝てなかったろ?」 「……バレバレ?」 「…バレバレ……心配だから、これからはちゃんと寝てくれよ?」 「……爽…また寝かしつけてくれる?」 上目遣いでそう呟くと、別の意味で寝かせたくなくなるわ!と小声で突っ込まれて笑ってしまった。 やっぱり爽って…ムッツリだ! 俺は左手に持ったままになっていたティーカップを口元に持っていく。 爽の淹れてくれた紅茶をゆっくり飲みながら、2人で笑い合う……こんな幸せなことないな。 またこんな時間がやってくるなんて…… 「……あきは、小さい頃にした約束……覚えてるか?」 「え?約束…?」 「やっぱ覚えてねぇか……お前まだ5歳くらいだったしな……」 「どんな約束…したの…?」 爽は俺の目をじっと見た後、握っていた手を絡ませて…繋ぎ直した。 「『俺があきを幸せにするから』って…約束した」 そう言われて……、ハッと思い出す。 確かに……言われた…… そうだ…… あの時も、今と同じ様に…手を繋いでた… そっか、爽が熱を出した時見たあの夢……あれって……小さい頃、ほんとにあった出来事だったんだ…! 「………ソレ……!俺なんとなく…覚えてる……!っていうか、この前夢に出てきて……」 「えっほんとか!?」 「待って……じゃあ、爽って……あの時からずっと俺のこと…好きなの…?」 「……初恋だって…言ったろ?」 「爽って……」 「え?」 「めっちゃショタコン……」 「ちっげーよっ!!お前だから好きになったの!!年齢関係ないっつの!!」 ぷんぷん怒る爽が可愛くて、ごめんごめんと笑いながら謝る。 …嬉しい。 そんなにずっと……俺のこと… 「あの時お前…俺になんて返事したか覚えてるか?」 「………いや、それは全然……俺、なんて言ったの?」 「『早く迎えにきてね』だ」 「…わーお……」 「もう、心臓鷲掴みにされたっつの…」 5歳の俺、グッジョブ。 完全に爽のこと手玉にとってんじゃん。 クスクスと笑いながら爽を見上げると、ちょっとムッとした顔で見つめ返された。 と同時に、ヒョイっとティーカップを奪われ、グッと体重をかけられる。 そしてそのまま、 ソファに押し倒された。 この展開……何回目? 完璧なビジュアルの王子様が、艶っぽい瞳で俺を見下ろす。キュンと胸が高鳴って…息が苦しくなる。 「……爽って…押し倒すの…癖?」 「は?何だソレ?」 「だって……この家に来てから…何度も押し倒されてきたから……癖なのかなって」 「いや、ちげーよ!!なんて言うか…、一応あきへの欲望と戦ってたって言うか…まぁ、押し倒してる時点で欲望に負けてるけど…」 「じゃあ……他の人にはしてない?」 「するかっ!!!」 「なら……よかった…!他の人には絶対しないでね…?」 「……しねぇよ……お前にしか」 「えへっ……嬉しっ…」 俺の言葉に、爽は目を細めた後…そっと唇を重ねる。 何度か角度を変えて触れるだけのキスをされて、気持ちよくて…身体が震える。 「……あき、」 「…ん?」 「……俺と、付き合って……」 「あはっ…!今更じゃんっ!」 「…返事は?」 「……ふふっ……はい、許嫁様」 爽はニコリと笑って、俺の顎を掴む。 さっきまでの優しいキスは、 眩暈がするほどの大人のキスに切り替わった。 …To be continued.

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