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この先プラトニックにつき【相談編】1
みんなはどんなおとぎ話が好き?
白雪姫?赤ずきん?人魚姫?
それとも、ヘンゼルとグレーテル?
俺は……シンデレラ。
ガラスの靴を落として消えたシンデレラを、王子様が必死に探すって展開がたまらなく好きなんだよね。
え?
……なんでかって?
だって…………どこかのカップルの馴れ初めにちょっとだけ似てるでしょ?
消えた許嫁を探して、やっと見つけ出して愛を囁く……
そう、これが俺たちのハッピーエンド。
でも、現実はおとぎ話のように上手くはいかない。事実は小説よりも奇なりってこと。
だから…ハッピーエンドのその後の方が、実はもっとずっと……
複雑だったりする……
「暁人……この美人……誰……?」
「……爽の再従兄弟(はとこ)で俺の親友の、結城 要さんです……」
「…口説いていい?」
「…………恭ちゃんに死ぬ覚悟があるなら…」
ここは俺と要が通う大学の近くにある、庶民的なファミリーレストラン。
今は夏休み中だけど、サークルの活動をする生徒のために大学自体は解放されていて、空き教室も自由に使える。だから時々要と大学で落ち合って洋服作りを手伝ったり、お茶したり、勉強会したりしてる。
今日はその帰り。
目の前には、この店に似つかわしくない仏頂面の美人と、その美人をガン見している長身の男前が隣同士に座っている。2人は俺の貴重な男友達。どうせ両方に意見を聞こうと思っていたから2人まとめて話し合いの場を設けたけれど、何故か予想外の展開を迎えていて…正直困惑している。
恭ちゃんが男女問わず綺麗な人が大好きっていうのは爽からも本人からも聞いていたけど…ここまで過剰反応しているのは初めて見た。
そりゃ、要は…まずその辺にいないレベルの美人だから気持ちはわかるけど…まさかいきなりこんなことになるなんて……
「暁人……この変態……誰……?」
「……爽の同僚で俺ともお友達の、和倉 恭介さんです…」
「…殺していい?」
「………………それで要の気が済むなら……」
俺たちの物騒な会話を聞いても、恭ちゃんは瞳をキラキラさせて要を見つめるのに夢中だ。
いやすごいな…
一目惚れって本当にあるんだ…!
「かなぴょん!!!俺と付き合って!!!!」
「あぁ!?ふざけたあだ名付けてんじゃねーぞ変態クソ野郎…!!殴られたくなかったら二度と口開くな」
「……ハァーーーー!!!やばい!!!!理想の女王様についに出会った…!!!暁人ありがとう!!!俺にも美人が降ってきたぁああああーー!!!」
「は、はぁ……」
恭ちゃんは両手を天高く掲げて、ガッツポーズをしながら俺を見る。
「オイ暁人!!!何なんだよコイツ!!!ほんとにお前の友達か!!?日本語通じねーんだけど!!!」
「かなぴょん……本当に綺麗……俺と結婚しよう…?」
「どさくさに紛れて交際飛び越えてゴールインしようとしてんじゃねーよ!!!」
「アアアーーーッ!!!的確なツッコミに痺れるぅー!!!」
果敢にも要に抱きつこうとする怖いもの知らずの恭ちゃんに、俺は心底驚く。片手で止められてるけど。
すごいなぁ…!要の毒舌にここまで一歩も引かずに食らいつく人初めて見た……もしかして、この2人案外相性いいのかな?
とりあえず、見た目はめちゃくちゃお似合いに見える。
恭ちゃんは183cmの長身で、上品な茶髪に塩顔の男前。要は175cmで、ゆるいパーマのかかったミルクティーベージュの髪に小さな顔と長い手足の超美人だ。タイプは違うけど、お互いがお互いを引き立て合っていて隣にいると見てるこっちが幸せになる。
……なんて言ったら、要に怒られそうだから絶対言わないけど。
「テメェ…次そのアホみたいなあだ名で呼んだらその茶髪全部むしってやるからな……!」
「おっけー!!!」
「チッ…ほんとにわかってんのかよ…」
「わかってるってばぁ~!ところでかなはどんな人がタイプ?」
「はぁ?」
「俺はねぇ~女王様タイプの美人ー!」
「……強いて言うなら……お前以外誰でもタイプ」
「えー?またまたぁ~!かなってば照れ屋さーんっ!!……あ、かな飲み物頼んでないじゃん!何飲みたい?コーヒー?紅茶?」
「えっ?あー…えっと……チョコレートラテ…」
「はぁ!!?かわいい!!!!甘いもの好きなの???ねぇ~ギャップかわいい~!!!!俺も甘いもの好きだよっ!!」
「うっぜーな!!!お前の好みなんて聞いてねーよ!!!!」
「すみませーん!チョコレートラテくださーいっ!」
「お前俺の話ちょっとくらい聞けよっ!!」
「……あのぉ…俺帰ろうか?」
俺が呼び出したはずなのに、何故か俺抜きで会話が弾みまくっているようで…居た堪れない気持ちになる。
「はぁ!?暁人冗談やめろよ!!!こんな奴と2人っきりなんてぜってー嫌だからな!!!…つーかお前相談は?」
「そうだった!!!かながあまりにも美人すぎて本題忘れてた!!!暁人の相談って何!?」
2人がようやく俺の話を聞く気になったことに安堵する。やっぱり、1人ずつ呼び出した方が良かったのかな…?
ま、いいや…俺にはこの2人しかこんなことを相談できる友達はいないんだ。どーせ話すなら、まとめて今話そう。
俺は大きく深呼吸を2回したあと、正面を見据えて口を開いた。
「実は…………、爽との関係が……進展しないの……」
「「………え?」」
「……その……爽から……求められないの……」
「「………」」
無言になる2人に、俺は痺れを切らし……ハッキリ告げる決意をする。
「だからっ!!!!!爽がぜんっぜん俺に手出してくれないんだけどどうしたらいいと思う!!!!??」
俺の叫び声がファミレス中に響き渡る中、大人2人が盛大に目を見開く。
もう、なりふり構っていられない。
俺は、めちゃくちゃ悩んでるんだ!!!!
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