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この先プラトニックにつき【相談編】2
俺が爽と付き合い始めたのは、約1ヶ月前。
紆余曲折を経て、お互い初恋を実らせたわけだけど……俺としては正直、すぐにでも手を出されると確信していた。だって、爽って隠すことなく俺に対してえっちなことガンガン言ってくるし…なんなら、付き合う前に薬で発情した俺のオナニーを手伝ってくれたこともある。こんなの、すぐにえっちする流れになるって思うでしょ??
それなのに、現実はめちゃくちゃプラトニック。俺たちの関係はキスまでで完全にストップしていた。
爽も、要も、恭ちゃんも、両親や兄弟でさえ、俺のことを結構な頻度で子供扱いする。もちろん、嫌な意味じゃなく…なんていうかかわいがってくれてる延長だっていうのはわかっている。蝶よ花よとチヤホヤされるのは、別に嫌じゃないけど……それでも、俺はれっきとした18歳の男だ。恋人との色事に、興味がないわけがない。
つまり……俺はもう、爽と色々する覚悟はとっくに出来てるってこと!!!
同じ家で生活して、毎日一緒にいて、相当濃ゆーいキスを交わす。それなのに、爽は絶対にそれ以上のことを俺にしようとしない。身体にも触らないんだから、よっぽどだ。
俺のことをかわいい、エロい、と口癖のように言ってくる癖に、行動が発言と矛盾しまくっている。
原因がわからないから、余計もどかしい。
……もしかしたら、実際付き合ってみたらやっぱり男とえっちは無理だったとか……?
爽の気持ちを疑っているわけじゃない。
13年の片思いは伊達じゃないし、目を見れば本当に爽が俺を好きでいてくれていることがわかる。
だけど、どんなに顔が女の子に見えたって俺は男なんだ。キスや身体に触るまでは出来たとしても、実際最後まで…となると確かにハードルは高いのかもしれない。
俺は爽と付き合って以降、かなり入念に男同士の行為について調べた。だって、いつ爽とそういうことになるかわからないでしょ?だから、これはエチケット。同性となると男女の交わりと比べて、途端に物理的な壁が大きくなるからお勉強は必須だよね。元々性に関してかなり無頓着な自覚はあったけど…男女の行為のことだってほとんど何にも知らなかったんだから、男同士なんて…ほんとに、未知のことだらけ。
正直めちゃくちゃ恥ずかしいし、調べること自体にも抵抗はあった。それでも目を背けずに向き合ったのは、俺も爽のことが本気で好きだからだ。相手が爽じゃなきゃ、ここまでしない。
それくらい俺にとって爽は、大切な人。
それなのに……当の本人は知らぬ存ぜぬだ。
童貞の俺がこんなに爽との未来について真面目に考えているというのに、爽は毎日いたって通常運転。
これには、さすがの俺もヘコむ。
もう、どうしたらいいのかマジでわかんない。
爽に理由を聞けたらそれで済む話だけど……さすがに出来ない。本人に聞くのはやっぱり恥ずかしいし…それに、いざ俺からそういうことを求めて…もし拒否されたら?
無理。俺多分、ショックで死んじゃう。
月末にはハネムーンという名の初めてのお泊まり旅行まで控えているのに…このままじゃ何もないまま夏休みが終わってしまう可能性が高い。
その危機感に、俺はとうとう耐えきれなくなり……経験豊富そうな大人2人に助けを求めるに至ったわけだ。だって、餅は餅屋に聞けって言うでしょ?特に恭ちゃんはこの手の話得意そうだし。
とにかくなんでもいいからアドバイスが欲しい!!!!
「ねぇ、どうしたらいいと思う!!?」
「わーお…暁人って意外と大胆だねぇ…」
「はぁ~………マジかよ予想外すぎる……お前ら、とっくにそういうこと済ませてると思ってた…」
「俺も!!!爽って付き合う前から暁人にめちゃくちゃ骨抜きだったじゃん!!!なのに手出してないとかマジ信じらんない……アイツ正気?」
「あ…爽のことだから…大事すぎて手出せないとかじゃね?」
「確かに…そうかも!俺の知る限り爽がすぐに手出さなかったのなんて暁人が初めてだし」
恭ちゃんのセリフにドキッと心臓が跳ねる。
爽が俺とこうなる前、女関係がかなり奔放だったことは本人に聞いて知っていたけど……俺以外にはすぐに手出してたっていうのは…知らなかった。
そもそも、大事すぎて手が出せないなんてことが、本当にあるんだろうか?爽は元々ストレートだし……やっぱり……男相手じゃ最後までする気にならないだけなんじゃ……
「ゲッ………爽ってヤリチンかよ?うわぁ…親戚のこういう話全然聞きたくねぇ……」
「ヤリチンっていうか…あのルックスで性格もいいからどこ行っても女がほっとかないんだって…!アイツにその気がなくても気が付いたら女が爽の上で腰振ってんの!」
「うーわ……お前もう黙れ…例えがエグすぎんだよっ!想像したくねーわ!」
「あ!暁人誤解すんなよ!?爽が恋愛に対して適当だったのは、暁人への恋心拗らせまくって自暴自棄だったからで…」
「あ…うん、大丈夫…ちゃんと本人から聞いてるから…」
「なんだ……なら良かった…!」
目の前で大人2人があーだこーだとまた言い合いを始める。それをぼんやり眺めながらアイスコーヒーを飲む。……けど、味がしない。
爽……なんで俺には手、出してくれないの…?
俺、もういつだって初めてをあげる覚悟出来てるのに………
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