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例えば及ばぬ恋として【初夜編】3

「あ!もしかして…!」 「ん?」 「爽が俺の初体験にこんなに色々こだわってくれたのって……ファーストキスの流れを後悔してたから…も、ある…?」 「……あきはほんとに、聡い子だなぁ…」 「やっぱり!そっかぁ~だからあんなに、親に挨拶してからとか…旅行までえっちしないとか…沢山こだわって我慢してくれてたんだねぇ……なるほどー!俺全然知らな…」 「あき、ストップ」 「へ?」 「そろそろ、こっちに主導権……返して欲しいかも」 「…え?」 そのまま唇を奪うと、あきは驚いて口を硬く閉じる。不意打ちだったから、反対に目はガン開きだ。まん丸の瞳に超近距離で見つめられて、思わず笑ってしまった。 ……どうやら本当に我慢しすぎたみたいだ。もう、自分を止められそうにない。 「ふっ…!…コラ、あき……逆」 「…!?」 「口開けて、目…閉じて」 「あ、…ごめっ…」 「……ん、いい子」 言われるまますぐに目を閉じたあきは、薄くパカっと唇を開いた。すかさずその隙間に舌を捻じ込んで、上から思いっきり体重をかけてやる。突然のことにふらつくあきの細い腰を支えながら、じっくり口の中を舐め回すと、甘い声が漏れ始めた。 「…っ!ッ……んっ…ンンッ…!」 「……」 「んっ……ン……っ!むっ…」 「あき……、」 名前を呼ぶと、あきはピクピクと身体を震わせた。その反応がかわいくて、ますます欲望が煽られる。 あきの舌と自分の舌をゆっくり絡ませて、それから丁寧に歯列をなぞる。顔の小ささのせいなのか、あきの歯は普通の人よりちょっと小さめ。俺、それを舌で触るのがすげー好き。 本人に言うと、確実に"ド変態!"って叫ばれるだろうから…言わないけど。 「……ッ…んっ……!ンッ…」 「……っ…はっ…」 「ふっ…、っ…そ、う」 「…ん?」 「まっ、て…!…ッ、ンン…」 「ヤダ」 「だ…めっ…!立って、らんないっ…!」 「……ん…わかった」 口付けたままニヤッと笑って、俺はあきを抱き上げた。動揺するあきをよそに、ちゅ、ちゅ、とわざと大きくリップ音をたてながらベッドに向かう。 キングサイズの真っ白なベッドの上に優しくあきを降ろし、横たわらせる。そこでようやく、くっついたままだった唇を離す。そのまま両腕をベッドについて上から覆い被さると、あきは瞳を揺らしながら俺を見上げた。 「……っ!爽は……押し倒すの…好きすぎだってば…!」 「ふふっ……そーかも…!でも、絶対お前にしかしねーよ…?」 「……じゃなきゃ、困るよぉ……」 不安そうなあきがなんだか可哀想で、俺は安心させるように目元にキスを落とす。そう、ちょうどセクシーな泣きぼくろの位置に。 「………っ…」 「あき、怖くないよ…?」 「…っ、うんっ…」 「大丈夫……、ゆっくりするから」 「今はもうっ……こわ、いっていうか…あの、ドキドキして…」 「ん、そっか……」 俺が腕を伸ばしてベッドサイドのスイッチを押そうとすると、あきは慌ててそれを止める。 「……あ!ダメっ!全部点けないでっ!!」 どうやら部屋の電気を点けるのはマジで嫌みたいだ。今まで散々俺に裸見られてるくせに……今更すぎねぇ? 「…お前マジで言ってる?今まではそんなこと言わなかったのに…裸見られんの急に恥ずかしくなったの?」 「はっ…裸じゃなくて…!顔見られるのが…やなのっ…!」 「……は?…顔?なんで?」 このクッソ可愛い顔の一体どこが嫌だって言うんだ。全くもって意味不明だ。 あきはキョロキョロと視線を彷徨わせたあと、遠慮がちに俺を見た。 「その……気持ちよくなってるとこ……見られるの…はずかしぃ…」 「…………いや、俺お前がイってるとこ死ぬほど見ただろ……それこそ、あきがちんこ痛いって言うまで何度も抜い」 「ギャーーーーッ!!!!やめてよ爽!!!その話はもう聞きたくないっ!!!」 「お前が変なとこ嫌がるからだろ!?」 「いいから今日はベッドサイドのライトだけにして!!!」 「は!?やだよ俺全部みてーもん」 「見ないでよ変態っ!!」 「なんでだよ!?」 やだやだと散々駄々をこねるあきに、こっちもかなり粘ったけど…結局、仕方ないかと折れてしまった。 どーせ俺は、この天使には逆らえない。 仕方ないだろ。目に入れたって痛くないほどかわいいんだ。 要望通り、ベッドサイドのライトのみを点けると、あきは俺の首に腕を回してにぱっと可愛く笑った。 あーあ… 俺は一生、こうやってあきの思い通りになるのかな……… それが"最高だ"って思えちゃってるんだから、やっぱ俺はもう……末期なんだと思う。 「えへへ~っ、爽だいすき~っ」 「……チッ……この世で一番かわいいからって調子乗んなよ?」 「あははははっ!そこは…"ちょっとかわいいからって調子に乗るな~!"がテンプレじゃないの?」 「かもな?…けど俺、正直者なんで」 「ふふっ…!!爽は俺のこと好きすぎ!」 「…今頃気付いたの?」 「うん……13年も待たせてごめんね?」 微笑むあきの頭を撫でて、柔らかい艶々の黒髪に指を通す。 軽口を叩き合ったおかげか、あきの緊張や不安はすっかり消え去ったようだ。よかった。 もう、始めていいかな…? 「あき……」 「…ん…?」 「身体、…触っていい?」 「……うん、もちろん」 その返事を皮切りに、俺は浴衣の合わせ目からあきの太ももに手を這わせる。

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