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キスする前に出来ること【真相編】9

「………え?なにこれ……?」 「…かなり強めの……睡眠薬」 「………え?」 「今から飲むから……俺が寝たら………そしたら、………無理矢理キスして…お前の好きなように……抱け」 「……は………?」 「俺、ずっと不眠症で……何日もまともに眠れてないから、たぶんめちゃくちゃ効くと思う…だから飲んだらまず起きない」 「………なに、言ってんの……?」 こんなの、おかしいよな? でも俺はそもそも普通じゃないから……こうでもしなきゃ、お前のこと幸せにしてやれない。 自分から提案したくせに、涙がポロポロと頬を伝う。俺いつからこんなに泣き虫になっちゃったんだろう……ずっと我慢してくれてたのは……恭介の方なのに。 「……俺、お前と……っ……キスしたいんだ……」 「……っ、」 「セックス、……したいんだっ…恭介っ……!」 例え俺に意識がなくても、お前が俺と性行為が出来たって知ってくれていればそれでいい。 「……だからっ……、これからも……っ、そばに居させて……っ」 「……なんでっ…、」 「捨て……ないでっ……、恭介っ…」 涙が溢れて止まらない。 本当は、泣きたくなんてないのに。 これでいい。これでいいんだ。 俺たちは、ここから始まる。 やっと、踏み出せる。 恭介は黙って俯くと、俺の手から瓶を奪い取った。 「………恭……介…?」 俺の呼びかけに一切反応を示さない恭介に戸惑う。 ……これ……、もしかして…… 怒ってる……? 数秒の沈黙の後、恭介は勢いよく腕を振り上げ手にしていた瓶を玄関のドアに叩きつけた。 バリンッ!!!と、ガラス瓶が割れる音がして玄関の床一面に錠剤がザッと散らばった。 普段の恭介じゃ絶対あり得ない破天荒な行動だ。俺はただただ驚いて、目の前の男に視線を戻した。 「………な、なんで……」 「………は?なんで…?そんなのこっちのセリフだよかなっ……!!何をどうしたらそんな発想になんの!!!?」 「……え?」 「こんなことしなくったって…俺がかなを……捨てる訳ないだろっ……!!!」 恭介は再び俺を抱き締める。 身体を震わせながら、必死に感情を押し殺しているようだ。 「かな……絶対なんか勘違いしてる……!!!俺の様子が変だった原因は、かなが性行為出来ないこととなんにも関係ないよ…?」 「……え?」 「それどころか……、かな自体この件とは全く関係ないんだ……だって、原因は………俺の家族とのいざこざだから」 「…は……?……エッ!!!?そうなのか!!!?」 俺の言葉に、恭介は静かに頷く。 嘘………、じゃあ、俺の勘違い……? 一体、どこから……どこまで? だって、俺はコイツの浮気相手をバッチリ見たんだ。恭介のあの目は絶対、大切な人を見るときの目だった。 ………おかしい。 辻褄が、合わない。 さっきまで涙に濡れていた俺の顔は、一気に猜疑心一色に早変わり。こんなの、泣いている場合じゃない。 「待てよ……」 「え、なに…?」 「恭介が悩んでた理由が俺じゃないなら…………お前、なんで……」 「……え?」 「なんで………浮気……した……?」 恭介は俺からの質問に、今日イチのポカン顔で呆然とする。こっちからしたら、これ以上ないってくらいしんどい質問だ。なのに、恭介はいつもの3割り増しのアホ面を晒して黙っている。 …寝不足じゃなかったから殴ってるぞこのヤロー。 「……………ん?浮気?」 「そうだよ」 「……誰が?」 「お前が」 「俺が………浮気?」 「……うん」 目をパチパチと数回瞬かせた後、恭介は眉間に皺を寄せて困った顔を始める。 「それは……冗談?」 「……冗談言ってるように見えるか?」 「見えないけど…………えーっと………そんなこと、天地がひっくり返ったってあり得ないでしょ……俺は生涯かなに操立ててるんだから」 そりゃな?俺だってあの現場見るまでは本当に心からそう思ってたよ。お前のこと、100%信じてた。 だけどあれは……どう足掻いたって浮気だろ…?もしまだあの子とそういうことをしていなかったとしても、そうなり得るほど大事な人だったのは明白だ。恭介のあの優しい目は……他人に向けるものじゃなかった。 嘘なんて、もうたくさんだ。 もし本当に俺の勘違いなら……ちゃんと確証が欲しい…! 「…じゃあ、もうハッキリ聞くけど…!1週間前…お前が外で抱き合ってた男は一体誰なんだよ!!!!」 「………えっ」 「ただの知り合いとは言わせねーぞ!!!そもそもお前は俺に、妹の看病って嘘ついてあの男に会ってた訳で…!」 「ちょ、待った待ったストップ!!!!マジでわかんないっ!!!誰のこと言ってんの!!!?男!!?」 「そうだよ!!!!金髪でスタイルのいい若い男の子!!!!その子とお前が抱き合ってんの俺この目で見たんだからな!!!」 「はぁ!?いつ!!!?」 「だから1週間前!!!暁人のバイト先の近くの道端で!!!!」 さっきよりさらに眉間に皺を寄せて必死に考えた恭介は数秒後…、全ての問題が解けたと言わんばかりにハッとしてこちらを見た。 「それ………伊吹(いぶき)のことじゃん!!!!」 「……い、ぶき……?」 「はぁ~……なんだよ、マジか…あれ見られてたんだ…!そりゃ勘違いするよなぁ…!!」 「……え、…どういう…」 「あーもうっ…!!ごめんかな…!!こんなことならもっと早く紹介しときゃよかった……」 「………は?」 「それ…、俺の妹!!!」 …人間、あまりにも予想外のことを言われると声も出ないんだと、その瞬間悟った。 妹…………? 嘘だろ……?

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