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キスする前に出来ること【真相編】10
恭介は携帯を取り出すと、写真を開いて俺に見せた。
「和倉 伊吹(わくら いぶき)18歳、今…高校3年生……正真正銘俺の妹だよ」
「………男じゃん」
「いや、マジで妹なんだって!!!!」
「うっそぉ…?」
「マジなの!!!!」
画面の中では、金髪の男の子と恭介が隣同士で写っている……ように見える。改めて念押しされても、100%男にしか見えないその子は…柔らかい表情で微笑んでいて…顔の造りが恭介ソックリ。2人に血の繋がりがあることは明らかだった。
そっかあの時……暗かったし、雪降ってたから……顔まではよく見えなかったもんな……
「……なんだ……じゃあ、ほんとに……」
「勘違い!!!」
「………」
「うわっ!?かな!!!?」
安心した瞬間、膝がガクガク笑って…倒れそうになる。それに慌てた恭介は、すぐに俺の身体を支えてホッと息を吐いた。
「はーびびったぁ…!!大丈夫!?」
「ん……」
「かなほんとにしんどいんだね…?座る?」
「いや…平気……ってか、なんか…安心したら力抜けちゃって……」
「えー…?それ俺のせい?俺のせいだよね?やだぁ~もう、すっげぇかわいいんだけどぉ…!」
「……うるせー黙れふざけんな…殺すっ…!」
「ブハッ!!いつものかなだぁ~!!好きーっ」
ニコニコと微笑む恭介の顔の周りにはポコポコと花が咲いているように見える。クソご機嫌じゃねーかよ。
けど、よかった……………
恭介は……俺に嘘、ついてなかったってことだ……
そう思ったら、寝不足の体調不良なんて吹き飛ぶほど身体中に血が巡るのを感じた。なんて現金なんだ。わかりやすすぎだろ。
恭介は再び携帯の写真を指差して、俺に見せる。
「俺たちすっげぇそっくりって言われんだけど…似てない?」
「…瓜二つ」
「だよね!?まぁ…伊吹はどう見ても男にしか見えないからかなが勘違いするのもわかるんだけどね…?あいつあの状態の方がナンパ成功しやすいらしくて……」
「……え?ナンパ?」
「うん…俺が言うのも何だけど、伊吹ってすーげぇ口上手くてさ……その上俺以上の面食いなんだよ!?」
「お前以上……って、マジで?」
「大マジ!!!!だからかなのこと、紹介したくなかったんだよ……あいつ男も女も見境ないから…かな絶対口説かれるし……」
「…は?…いや、それはないだろ…俺お前の彼氏だぞ…?いくらなんでも身内の相手にまで…」
「あり得るんだってアイツなら!!!!だから爽も伊吹のこと暁人に話してないんだよ!!?暁人なんて…伊吹に近づいただけで妊娠させられそう…!!!怖い!!!」
恭介の口からはどんどんと知らなかった事実が明かされていく。
言われてみれば確かに……爽は恭介の妹さんと顔見知りなはずなのに、暁人からその辺の話一切聞いたことない。…なるほどな。こういうことだったのか。元チャラ男のコイツにここまで言わせるって……一体どんな妹だよ……末恐ろしい……。
つーかそもそも男女逆転しすぎだろ!なんで暁人が妊娠する側なんだよ。おかしいだろ!ツッコミ追いつかねーよ。
「えーっと……じゃあ、妹さん"も"バイなのか…?」
「まぁ、そうみたい……え、待って俺は違うよ!?」
「え!?お前は絶対バイじゃん!!前彼女いたし、今は……俺と付き合ってるし…」
「いやそーだけど!!!でも違う!!俺本来めちゃくちゃノンケだよ!!?美人が好きなだけ!!!男で恋愛感情持ったのも性的に魅力感じたのもかなが初めてだし!!!!」
「………それは……、知らなかった…」
「っというか…今は男とか女とか関係なくかな以外……興味ないけど……」
恭介はチラッと恥ずかしそうに俺の顔を見た。
いや、なんで今更この一言が恥ずかしいんだよコイツ。普段から散々しょうもないこと言ってるくせに。もっと恥ずかしがるとこ他にあるだろ。わけわかんねぇ…。
「で、俺の疑い晴れたんだよね!!?」
「…あー……うん、」
「そもそも俺は、浮気なんて未来永劫絶っっっっ対にしないからね!!??例えかなにしろって言われたって、無理!!!俺もうかな以外じゃ勃たないもん!!!!グラビア見ても、AV見ても、ピクリとも反応しないからマジで困っ…」
「ストップ!!!そこまで聞いてねーよ!!!!つーかなんでそれは恥ずかしくねーんだよ!!!お前の羞恥ポイントマジで意味不明だな!!!?」
「えーー!?聞いてよぉ!!?俺かなと出会ってからかなでしか抜いてないんだよ!!?特に海行った時の写真には相当お世話になってて…」
「ハァ!!?いつ撮ったんだよ!!?消せこのやろー!!!」
「キャーーーッ!!!やめてくださーいっ!!!」
玄関でバタバタと暴れていた俺たちは、靴を履いたまま倒れ込む。咄嗟に恭介が下敷きになってくれて、俺は恭介の胸の上に落ちた。
顔を上げると、ニコニコ……いやむしろ、ニヤニヤした表情の恭介がこっちを見ている。
「………っ、お前…変な顔すんなきもい」
「えー?させてよぉ~…俺今めちゃくちゃ幸せ…」
「……チッ」
「ふふふっ…!」
「笑うなっつの…、俺……ほんとにショックだったんだからな」
「うん……勘違いさせて…悩ませて……本当にごめんねかな……でもね、かなが俺のことたくさん考えてくれてたことすごく嬉しい」
「………なんだよそれ……」
「だって…俺たちの関係って俺からの一方的な愛から始まってるからさ…かなは結構流されて付き合ってくれてるみたいな部分もあったと思うし……いまだに、ほんとに俺でよかったのかなー?なんて思っちゃう時あるんだ……だから、かながそんな風に思ってくれてたってわかって…俺本当に感動してるんだよ?」
恭介は、赤くなった俺の目元を指で擦りながら心底愛しいものを見る目で俺を見つめる。
ああ……、俺はなんでこの人を疑ったんだろう。
恭介のこの目は…妹さんに向けるものと明らかに違うじゃないか。
愛と、切なさと、そして…欲望を含んだ……俺だけに向けられる特別な瞳だ。
今なら、素直な気持ちを……伝えられるかな…?もっとちゃんと……、恭介にわかって欲しい。
俺がどれほど、お前が好きか。
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