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涙
連れて来られたのは、あの大きな桜の木の下
「ここ......覚えてる?」
「あぁ、覚えてるよ。綺麗だった。桜も提灯の列も住宅街の光も環も」
「うん......嬉しかった。楽しかったこと全部......馨のおかげだもん。馨が一緒だったから」
何処か遠くを見つめる君が遠くへ行ってしまいそうな気がして、手を取った
「環......」
「知ってるんだ、馨が払い屋なの。あの時、綺麗だなって思ってたんだ。紋章」
「儀式で......18歳になる年に一人前の証として、御前から授かる。これが正装」
「その黒の装束も似合ってる。格好いいよ」
こちらを向かない環にもどかしくなって抱き締める
「環っ!」
「言いたいこと、沢山あるのにっ......足りないよ......」
前に回した腕に温かい水滴が落ちてくる
「ねぇ、馨......ここ触ってみて?」
手に温かさを感じた
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