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出鼻
「「「「............」」」」
誰か何か言ってくんないかな~
八雲家に到着したものの、僕と桜は客間に通された(監視付きで)
馨は、お父上とお話し中
んきぁっ!んうぅっ......んまっ!
桜の声だけが静かに響く
可愛いフワフワだ
指を差し出すと手探りで両手を動かして掴まってくれる
馨の前では、言わないと約束したけど......
あの時、諦めて2人のことを思い出せなかったら......
この子のこれから先の成長なんかも見られなかったんだなぁと考える
“もし”なんて話でも、ゾクッとする
スパンッと襖が開いた音に振り返ると馨が立っていた
「環、桜を連れておいで。今日は、休もう」
「挨拶は、いいの?まだ、ご当主に――」
「いいの。早く行こう捕まる前に」
「えっ?」
手を引かれて奥へ奥へと進んでいく
「馨!待たんか!馨~」
後ろの方から低い声が聞こえる
「馨?お父さんじゃないの?」
「疲れてるでしょ?捕まったら、暫く休ませてくれないからね。こっち!」
いざっ!と思っていたから、ちょっと出鼻を挫かれたみたいだ
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