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第7話

朝。 携帯のアラームで起きた俺は、横で眠っている翔悟を起こさないようにベッドから抜け出す。 「…………」 何度となく見た、可愛い寝顔。 絶対に悲しい思いをさせまいと生きてきたのに。 キッチンに向かいコーヒーを1杯飲むと、俺は冷蔵庫に貼ってあるホワイトボードに今日の予定を書き、翔悟の朝食と自分の昼食の支度を始めた。 ホワイトボードに予定を書くのは、妻が亡くなってからずっと続けている俺の日課だ。 そこに翔悟も予定やメッセージを書いてくれるようになり、それは今も続いていた。 夜中に起きて書いたのだろう、今日の日付と予定が翔悟の字で書かれていた。 翔悟は今日は午後から講義があり、その後アルバイトがあるようだ。 「…………」 キッチンの少し高い位置に貼られた写真。 今の関係になる前、去年の夏に休みを合わせて一緒に旅行した時の写真。 翔悟は俺と写真を撮るのが好きで、部屋のあちこちに旅行の時に撮った写真や一緒に外食した時に撮った写真を飾っていた。 写真にはペンで俺の名前と自分の名前をローマ字で書いてあった。 何気なくその裏を見ると、そこには、 『ILoveYou、KEITA』 という文字が書かれてあった。 俺の名前。 いつから翔悟は俺を父親じゃなくて、恋愛対象として見るようになったんだろう。 それを知った俺はどうすべきなんだろう。 ……話し合おう。 ちゃんと翔悟と向き合おう。 父親としてじゃなくて、ひとりの男として。

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