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第8話
仕事を終えた俺は、その足で翔悟のアルバイト先のコンビニに向かった。
翔悟は俺が店に入るとすぐに俺の傍に来た。
「義父さん!」
嬉しそうな笑顔を見せてくれる翔悟。
それは子供の頃から変わらない、愛らしいものだった。
「一緒に帰れるかと思って来たんだ。店内で待たせてもらうよ」
「うん、分かった。ありがとう、義父さん」
人前では決してあの冷たい目はしない。
今までどおりの優しい翔悟のままだ。
あんな目をするようになってしまったのは明らかに俺の過去を知ってからだ。
きっと、翔悟はその前から俺の事を想っていてくれていたんだろう。
だからこそ、俺のあんな姿を見て、失望して、あんな目で俺を見るようになったに違いない。
「梨田くん、おとうさんと仲良いよね!私ならおとうさんと帰るなんて絶対嫌だよ」
「何で?おとうさん嫌いなの?」
雑誌を読みながら翔悟を待っていると、翔悟が一緒にシフトに入っている若い女の子と話しているのが聞こえた。
「嫌いじゃないけどさ、もう大人だし一緒に帰るって歳でもないじゃん」
「そうなんだ。きっと男女だからじゃない?」
「そうかもね〜」
「オレと義父さんはさ、同性だし一緒にいるのが当たり前みたいな感じだからっていうのもあるかな」
「そっかぁ、梨田くんってホントおとうさん大好きなんだね!」
「……うん、自分でも自覚してる」
ふたりの会話をついつい聞いてしまっていた。
翔悟の言葉が、俺はすごく嬉しかった。
あぁ、そうか。
俺も翔悟が大好きなんだ。
だから昔の過ちを知られたくなかったんだ。
翔悟の前で少しでもカッコつけたかったんだ。
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