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第9話
「義父さん、お待たせ」
「お疲れ様、翔悟。どこかで飯でも食べて帰らないか?」
「うん、いいね」
車を停めていた駐車場まで並んで歩く。
「義父さん」
「ん?」
「何かいい事あった?」
そう言って俺を上目遣いで見る翔悟。
大人びた、どことなく色気のある雰囲気が、俺をドキッとさせた。
「そんな風に見えるのか?」
車に乗り込みながら尋ねてみる。
「うん、オレとふたりになったら最近の義父さんはいつも今にも泣きそうな目でオレのコト見てるから、今日はちょっと違うなぁって思って」
ふたりとも席に着いてシートベルトを締めると、翔悟が俺の大股に手を置く。
俺の手よりは小さく、だけど長くてスラッとした綺麗な指をした手。
「お前とちゃんと話をして、お前の心ともちゃんと向き合いたいって思ったんだ。そう思ったら、心が少し軽くなった気がした。そのせいかもしれないな」
俺は運転しながら、その手に自分の手を重ねる。
「義父さん……?」
「ありがとう、翔悟。俺の事、一番好きでいてくれて。それなのに俺はカッコ悪いだけじゃなくて、お前の気持ちをちゃんと受け止めていなかった。自分の事ばかり考えてた」
その手を強く握りながら、俺は翔悟に言った。
「だから知りたいんだ。翔悟がいつから俺の事を好きになったのか、これから俺とどうしていきたいのか、本当の気持ちを話して欲しいんだ」
「…………」
俺が強く握ったその手を、翔悟も握り返してくれる。
「義父さん、外食はいいから今すぐ家に帰ってふたりになりたい」
「……分かった。じゃあテイクアウトで何か買って帰ろうか」
「うん……」
それから俺たちは通り道の弁当屋で弁当をふたつ買って帰宅した。
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