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第8話
みずきとアキラは飲物を買ってベンチに並んで座る。
公園には小さな子どもを連れた母親たちが数人いるようだ。
「ほんと、天気がよくて良かった、オレ日頃の行いがいいからかなー」
犬のリードをベンチに結んで、背伸びしながら言うアキラ。
「あぁ、そうだな…」
その可愛い仕種に見とれながら頷くみずき。
「って、普通つっこむだろ?」
「え?そうか?」
「普通、自分で日頃の行いがいいなんて言わないだろ?」
「あぁ、まぁな…でも、その通りだなと思ったから…」
アキラは日頃の行いがいいだろうということで…
「がくっ…まぁ、いっか…」
アキラは呆れたように笑いながら、犬達に買った水を飲ませている。
「こうして外でのんびりするのもいいな…はい」
感想を伝えながら、開けてあげたスポーツ飲料をアキラに渡すみずき。
「サンキュ、いただきます」
そう一口飲むアキラ。
「あ、」
不意にみずきが声を出す。
「ん?どした?」
アキラが軽く首を傾げて尋ねる。
「俺の、不良品だ…」
「え?あ、ほんとだ…」
アキラが覗き込むと、缶コーヒーを買ったみずきが開けようとしたが、缶の開け口のつまみの部分だけ取れてしまい、フタが開かなかったのだ。
こうなっては普通には開かない…
「どうする?」
「大丈夫、開くから…」
「どうやって?」
「こう、」
取れてしまったつまみ部分を持って、飲み口の切れ目の線を力任せに押さえると、なんとか少し飲み口が開く…
「すげ…けど、飲むとき危なくない?」
「あぁ、多少飲みにくいくらいで平気だ、運が悪かったんだな…」
苦笑いを浮かべるみずきだが…
「逆に考えて、最近は不良品に当たる方が珍しいから運がいいのかもな…」
アキラは軽く考える仕種で言う。
「はは、それもそうか…」
悪運が強いとも言えるな、と笑いながら答えるみずき。
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