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第29話

「あぁ、パスタだが…アキラ、俺が作るから休んでいてくれ」 今倒れたばかりなのに無理をしてほしくない、と頼むが… 「平気だって言ってるだろ」 少し怒ったように言葉を返してくる。 「アキラ…、無理をしないようにな…」 それでも優しく心配する。 そんなみずきを見てアキラは… 「……分かってる、ごめん」 今のは八つ当たりだな…とちょっぴり自己嫌悪して謝るアキラ。 「謝らなくていいから…」 優しく肩を抱き寄せながら囁くみずき。 「ちょっと…ゾッとして…」 ぽそっとみずきの腕の中で呟く… 「え…」 「歩けなく…なったかなって…」 そっとみずきと瞳を重ねて伝える。 いつかはそういう日がくる…それは覚悟していることだけど… 実際になったらやっぱり否定したいし…信じたくないから… ……今回はすぐ歩けた… けれど、次歩ける保障はどこにもない… そんな不安が心を縛る。 「…アキラ、」 「歩けてるうちに…できることしたいから…手伝わせて、な、みずき」 身体を蝕むものはなくならない…だから少しでも元気なうちに…できることをしたい。 「あぁ、わかった…、けれどあまり無茶はしないでくれ、それで身体を壊したら元もこもない…」 前向きなアキラの気丈な言葉。 しかし、心の内にある不安な気持ちも痛いほどわかる。 その不安な心を打ち消すように、アキラをぎゅっと抱きしめながら…アキラの気持ちを優先させる。 でもやはり身体を案じて無理をさせないように頼むみずき。 「うん、分かってる、アリガト」 ぽそっとお礼を付け足しみずきの耳元へキスして、アキラはキッチンへと足を進める。 みずきもさりげなくアキラを支えながら歩いていき。 一緒に夕食の準備をはじめる。 今までにないことだったので、やはりアキラの体調を気にしながら過ごすみずきだった…。

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