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夏暁2
今年も地域の夏祭りは盆休みの手前の開催となっていた。
司と琉太が通う学校はそもそも進学校ではない。
卒業後の進路に進学を選ぶと言っても、多くは地元の小さな大学か短期大学、それと専門学校が選ばれる。この街か車や汽車で4時間以上はかかる都会に出ていく生徒は稀だ。
息抜きに夏祭りにでも行ってきなさい。午後の最後の授業が始まる前に担当の教員が言った一言に、生徒たちは歓声を上げて賛同し、その日の夏期講習はおしまいになった。
「司くん」
帰ろう、と琉太がいつもの通りに歩み寄ってくる頃には司も机の上と中の物をカバンに収めていた。頷き、立ち上がる司に寄り添うように琉太は歩き始める。
、廊下に出ると、他の生徒たちは声を掛け合い、これから祭りへと繰り出す算段をつけている。ひょいと琉太が司を見やった。
「司くん、お祭り行く?」
「いや?行かない、」
考える為の間は空かなかった。
夏休みが始まってから半月近く、司は高校受験の時以来に真剣に勉強をしている。
鈍るのは体だけではなく頭も使わなければ同じ事なのだろう。
知らないうちに蓄積していたらしい疲労はぼちぼちピークに達していて、今日の昼からの授業などは眠たくて仕方がなかった。
夏祭りと聞いても心が踊るタイプでもない。それに、そんな所に顔を出せば、せっかく遠ざかり掛けている悪い遊び仲間たちとも顔を合わせることになるだろう。この狭い町でそれは裂けたい。
帰って寝ようか、思いながら大欠伸をする司の横顔を見つめたあと、琉太が1度視線を逸らし、そして目を伏せた。
「ん?」
何事か唇を動かす様に気が付く。顔を覗き込むようにして何があるのかと伺うと、琉太は床に視線を落としたまま、意を決したように口を開いた。
「───それならさ、…あのさ、……うち、来ない…?」
思い詰めたような琉太の目と声音に、眠気は一瞬のうちに何処かに消えた。
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