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5 side.s
休憩時間も残り10分を切ったところで、同僚達は各々のデスクに戻る。
俺も後を追って席を立とうとした時、ポケットに入れていたスマホが震えた。通知を見なくても、送り主はわかっている。
この時間なら、向こうも昼休憩だろうか。
『お疲れ様。今日、会社まで迎えに行くよ』
「え?!嘘だろ、マジか……」
つい声に出てしまったそれに、前を歩いていた数人が振り返る。
慌てて口を手で押えたものの、1度出してしまった声は無かった事には出来ないもので。
「なんかあったか?」
「……えっと…、さっき話した番…が、今日迎えに来てくれるって…」
「マジ?じゃー俺らも澄晴の仕事手伝うわ!」
「定時に終わらせようぜ!」
「お、お前らなぁ…顔が見たいだけだろそれ…」
まさか、さっきの今で来碧さんを彼らに紹介出来る機会に恵まれるだなんて思わなかった。
電車通勤が主な俺を、休職中や非番の日は迎えに来てくれる事もたまにあった訳だが、今日は来碧さんも出勤日だ。
安心しきって上司の頼まれ事を快諾してしまった自分に少しだけ罪悪感を覚える。
『ありがとう!同僚も手伝ってくれるみたいだし定時目指して頑張るよ』
『あと、来碧さんに会ってみたいって言っててさ…少しだけでいいから、話してやってくれない?』
画面を開いたままだったのか、送信と同時に着く既読。
彼がαを良く思っていない事は承知の上での頼み事だった故に、断られるのは覚悟していたのだが──。
『いいよ。俺も紹介してもらえるのは嬉しいし。
綾木さんがこき使われてた奴らの顔拝んでおきたい。
…あ、元な。笑』
冗談交じりに許可を貰ってしまえば、急激に鼓動が焦り出す。
「お巡りさん、なんて?」
「い、いいってさ。会っても」
「ほんとか?!よっしゃお前ら〜!澄晴の奥さん見れるってよ!全力で仕事すっぞ〜!」
「声がデカいんだよ声がっ。
あとまだ籍は入れてないぞ!!」
賑やかな休み時間を終え、残りの数分で慌てて空の弁当箱を洗った。
一度帰る事も出来ないし、だからといって洗い物まで任せてしまう程亭主関白思考でもない。
「今日も美味しかったよ、ご馳走様」
そう言って箱をお返しする時の来碧さんの満足気な表情が、堪らなく可愛らしいんだ…。
俺は浮かれていた。
彼が突然迎えに来てくれる理由も考えず、彼の身に迫る危険にも気づいてあげられないまま。
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