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6 side.s

見事終業時間と同時にキリがついたのは、同僚のお陰で間違いないだろう。 基本的に呑み込みが早く潜在能力の長けているαが集まっているだけあって、普通に働くアリ=6割の人間がやる気を出せば、何事もスムーズに進むものだ。 通勤鞄を抱えてスマホを開けば、やはり早めに来ていた来碧さんからメッセージが届いている。 『今終わった!下行くね』 返信は無くとも、既読を確認すれば一安心。 良いのか悪いのかは分かりかねるが、同僚に会わせる事前提で話を進めていた件に対して拒否もないと言うことは、そう言うことで…良いんだろう。 「今から出るけど…本当についてくるのか?」 「「「もっちろん」」」 「おぉ…」 思っていたより人が増えているような気もするが…ま、仕方ないか。 まるで“綾木と愉快な仲間達”とでも名付けられそうな集団がエレベーターを待っていると、すれ違う女性社員から口々に聞こえてくる言葉。 「見た事ない車」 「かっこいいって言うより美人」 「手を振ったら気付いて笑ってくれた」 ……間違いない。来碧さんだ。 あの人は何でこう…天然タラシというか…。 番がいる以上、他人を誘惑するフェロモンなど無い筈なのに、溢れ出す色気に誰もが魅了されてしまう。 そんな来碧さんと、どうして俺のような落ちこぼれが番になれたのかは今でも全くわからない。 自動扉をくぐると、来客用の駐車場に見慣れた一台の白い車が見えた。 後ろで本気でパトカーを探している頭のおかしな奴もいるが、プライベートカーにまで赤ライトが付いていてたまるかと言ってやりたいものだ。 俺が駆け出すより早く気がついていたらしい来碧さんは車を降り、後に続く同僚達へ軽く頭を下げる。 笑顔、綺麗。 姿勢、完璧。 だけど片手には…また煙草。 まったく。もう匂いを隠す必要もないんだし、健康の為にも本数を減らしても良いと思うんだけど。 …まあ、だからといって彼の険しいいばら道を歩んできた過去が消えるわけではないのだから、特にαに囲まれてしまう今日はおのずと数が増えてしまうのも当たり前か。 「来碧さん、おまたせ! ご…ごめんね?まさかこんなについて来るとは思わなくて…」 わらわらと俺と来碧さんの周りに集まる同僚に、彼は一つも嫌な顔を見せる事なく微笑んだ。 「別に謝る事じゃないだろ? …初めまして。皆さんにお会いできて光栄です」 俺に向ける少し砕けた口調と、それ以外に向ける丁寧なそれ。 本人は特に気にしていないようだが、そんな小さな事が凄く嬉しい。 別に乱暴な対応を好む訳じゃないが、俺だけが特別だと言ってもらえているようで。

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