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20 side.s

「……で、キモがられて引かれるようにアレ突き通したわけ?」 「うん。なかなか様になってたんじゃない?」 「っはは。それで逆に煽ってやられるとか思わなかったのかよ?」 「そ、それは……そこまで頭が回らなかったというか…」 来碧さんは、俺のシャツを少し捲ると 赤黒く跡になった数ヶ所を労わるように、唇で触れた。 何度も、何度も触れて、わざとらしく擦り傷になっていた所に舌を這わせて。 「っちょ、来碧さんそれは……っ」 「痛いか?」 「痛いとか、じゃ……ないけど…」 シャツを掴んでいた手はいつの間にか外れており、服の下へ潜り込むような形で続ける姿はどこかマヌケで、けれどそれ以上に…熱を感じて、堪らなくなる。 ベルトもボタンもそのままなのに、器用にチャックだけを下ろされてしまえば、どんなに我慢していようとその主張を隠しきる事は不可能だ。 「……綾木さん、助けてくれたお礼…させてくれない、か…?」 「なっ……えぇ…そんな、ッ」 狭い隙間から彼の指が侵入し、ただでさえ窮屈さを覚え始めていたそこが更に余裕を無くす。 臍に埋められた舌が空気を含み、くちゅりと厭らしい水音をこぼした。 「来碧さん…発情期、この前終わったところだよね……珍しい、ね?」 明らかに様子が変だ。 来碧さんが自ら誘うような事は今までに数える程度しかなく、それも全て発情によるもの。 だからといって、彼の誘惑に勝てるはずもなく 思わずベルトのバックルに手を掛ける。 ──が、それをもう片方の手で阻まれた。 「言おうか、悩んで……でもその…お前に隠し事はしたくないから…っ」 「?」 ゆっくりと頭を出し、こちらを見上げた彼の瞳が大きく揺れた。 …今にも、泣きそうな顔をしている。 それが何を意味するのか。 その理由として思い当たる節が一瞬脳裏を過ぎったが、あまりにも信じ難い事であの時は気付かぬふりをした。 そう。 俺が彼らをすぐに見つけられたのは 突然、よく知る匂いが辺りに濃く広がったからなのだ。 「あのαな…前話した学生時代に俺を襲ったっていう……俺の、運命の相手…だった」 俺のベルトに触れて、いつもならそう複雑でもない安物のバックルすぐに外せてしまうのだろうが 両手を使ってもなかなか動かない様子から、来碧さんが酷く動揺しているのがわかる。 「綾木さんにしか、出ないはずのフェロモン…身体がバカになったみたいに言う事聞かなくて、番ってもないアイツに……匂い、バレた。 ごめん…俺、そんなつもり……無かったのに、あのままもし綾木さんが来てくれなかったら、俺…っ」 呼吸は乱れ、寒くもないのに口を閉じれば口内でカチカチと歯が当たる音が聞こえて。 Ωという性特有の不安を俺はわかってはあげられない。 けれど、彼が自身の本能的反応に責任を感じている事は痛いほど伝わった。

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