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21 side.s

「…ねぇ、来碧さんは、あいつに抱かれたいと思った?」 「俺…っ、ちが…でも身体、が…っ」 「本能とか身体の話じゃなくて、来碧さんの気持ちだよ」 意地悪な質問だと、自分でも思う。 ただ、俺は来碧さんにこれ以上自分ばかりを責めて生きて行くのは辞めて欲しかった。 「俺と来碧さんは運命じゃない。それでも俺は、来碧さんが他の誰よりも大切だよ。来碧さんもそうだって…俺は思ってる。 それじゃダメなのかな」 今だって、俺は来碧さんを想って 来碧さんに興奮して、スラックスを張り詰めさせて。 来碧さんのそこも少し大きくなっているの、気付いているんだよ。 発情しているわけじゃない。 匂いだって抑えられている。 それでも、互いにこうして傍に居るのは、愛し合っている証拠なんだって。 αもΩも関係ない。 俺という人間と、来碧さんという人間が想い合っているという証。 動物の中で、俺達人間は理性というものを持っている。 それが例え第2次性という獣的欲求に劣っていようが それが例え制御出来ない欲望に呑み込まれようが 俺は、来碧さんの心を信じたい。 一度は番になる事を拒んだ俺に、真っ直ぐな言葉で告白してくれて、 頸に印を刻む時、縋るように問われた「好き?」。 直接的な言葉はそう何度も言えた記憶は無いが その分態度で、行動で、あなたに愛を注いできた。 そして来碧さんも──。 「来碧さん、俺の事嫌い?」 「っ、なわけ…!す、き…だ……っ、大好きだ…!」 「うん、それなら何にも怖くないよ。俺も来碧さんが大好きなんだから。」 たとえ運命の相手に敵わなかったとしても 俺たちは、俺たちにしかない心の絆で結ばれていると思うから。そういう運命の形もあるんだって、信じてみたい。 「………綾木さん…、抱いて…っ。 俺が一番欲しいのはお前だって…俺の身体に、わからせるくらい…強くッ、おねが…」 「言われなくても、もうそのつもりだった」 俺は来碧さんを手放したりしない。 もう独りにはしない。 辛い事も、苦しい事も、ひとりで抱え込ませるんじゃなく、俺をどん底から救い上げてくれたあなたに恩返しを。 そして、最上級の幸せを。

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