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「上手くなくて…ごめん、な? 物足りないって……思っただろ…?」 柄にもなく弱気な来碧さんがそれ以上自分を卑下しないよう、ぷっくりとした薄紅色の下唇を食んだ。 「そんなの、思った事ない。慣れてないのは…気づいてたけど。 それ以外が完璧すぎて、むしろ人間味があって可愛いっていうか…」 鼻同士が触れる程近い距離。 脚を絡め、互いの主張を確かめ合うように密着して。 目を逸らさせぬよう、頬に手を添わせた。 「来碧さんの、お仕事の時の礼儀正しさが好き。ちょっと数は多いけど…煙草吸ってる時の横顔も好き。 強くて格好良い所も、その反動みたいにこうやって自信なさそうにするのも好き。 辛そうな顔は見たくないし、ひとりで抱え込んだりするのは辞めて欲しいけど、めちゃくちゃ頑張り屋さんな所も大好きだよ」 「いきなり…何、言いだして…っ」 いきなり 本当に、その通りだ。 普段から口下手で、世間話一つでも来碧さんの助け無しではなかなか盛り上げる事も出来ない。 そんな落ちこぼれが、こうしていくつもの言葉を連ねて、でもその全てに、嘘は一つも無くて。 「こんな状況で、それこそ雰囲気とか準備とか何にも無しなんだけどさ、俺と──」 怖くない、とは言ったけど、 嫉妬しない程自分に自信は持てなくて。 はたから見ても、俺のようなダメαと来碧さんのような強くて綺麗なΩが番だなんて不釣り合いもいい所。 それでも、あなたは俺を選んでくれた。 真っ直ぐな目で、俺の…俺だけのΩで居てくれる決心をしてくれた。 だからこの身を全てあなたに捧げる。 複数の番を持てる俺がそれを証明するには、これしか考えられない。 いや、消去法じゃなくて、これは俺の人生で一番の、あなたを永遠に縛る形のある証。 「俺と ──結婚してもらえませんか?」 何故か俺の方から溢れた涙に、やっぱりキマらないなと言って来碧さんは笑う。 その笑顔は今までに見てきた何よりも美しくて どんな景色より、どんな宝石より、どんな花より、ずっと輝いていた。 「断るわけ無いんだから…もっと、自信持てよばぁか」 抱きしめ合う中心で 二つの鼓動は重なり、一つの音になる。

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