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25 side.s
のぼせた首に舌を走らせ、感じるのは確かな脈動。
初めての時は自身の手を噛んでまで声を抑えていた来碧さんだったが、今日は素直に吐息を漏らす。
発情期の身体ではない、来碧さんのままで。
肩口を強く握られるせいでシャツの襟元が絞まり、自らの脈も普段よりずっと速く動いている事に気が付いた。
弾け飛びそうな勢いでボタンを外し、その手のまま来碧さんの袖を抜く。
初雪のように白く繊細な肌が、俺以外の愛撫を知らないのだと思えば胸は異様なまでに高揚した。
抵抗する事なく身を預けてくれた彼に、一つ、二つと増えていくのは紅い花。
来碧さんのように初めてとまでは行かない俺だが、それでも慣れているとは言えなくて。
同じ所に何度も唇を寄せてようやく花開くそれも、小さな虫に刺されたようなヤワな色付きだ。
「…み、見える所は、あんまり……」
「見せたくないから大丈夫」
あんまり、上手くもないしな。
だが上達した暁には、一つくらい許して欲しい。
全身に触れたのではと思うくらい、来碧さんのそこかしこにキスを落とした。
時折身を捩りながら声をこぼす彼は、恥じらいを捨てきれずに目を細めて。
「綺麗。来碧さん…」
灯される明かりの下で、見た目にもわかる胸の微振動は俺にまで影響を及ぼし、高まっていく。
暗がりの中、月光を頼りに肌を探るそれもなかなかのものだったが今は違う。
一片も隠れる事なく晒し出された彼の身体は思っていた以上に細く、独りで耐え忍んできた数多の苦痛を抱え込むにはあまりにも頼りなく思えた。
あぁ、綺麗だ。
明日、目が覚めたら消えてしまいそうに儚く
いくつもの刻印で繋ぎ止めなければ何処か遠くへ行ってしまいそうに切ない。
線を辿るように下へと手を移動させ、かつての心の痛みを孕んだ内腿に触れた。
これまで口で問う事は勿論、あえて触れる事も避けてきた部位。
来碧さんの呼吸のリズムが少し、変わる。
「それ…気持ち悪いだろ、触らなくていい…から…っ」
「気持ち悪くなんかない。
…だってこれ、来碧さんがいっぱいいっぱい頑張って来た証でしょ」
「…っ、」
簡単に肯定する事は難しいけれど
だからと言って拒むなんて事は無いし、否定もしない。
どんなに高い壁が立ちはだかろうとも、一生添い遂げなければならない“性別”という大きなハンデがある中、諦めない精神と少しも折れる事を許さないプライドで乗り越えて来た。
そんなあなたが、明日も生きる覚悟を持つためにその手で引いた痕たちを
俺が認めてあげないで、どうするの。
他人が恐ろしくてたまらなかった。
立場も境遇も違うのに、彼の過去を知った時には何故か同情心ではなく親近感が湧いた。
決定的に違うのは、俺が逃げていた時も、来碧さんは戦っていたという事。
今まで、すごく沢山頑張って来たんだよね。
頑張りすぎってくらい、きっと俺が思うよりもずっと。
だから、これからは
その痛みを俺にも分けて。
自分ひとりだけじゃなく、俺も居るんだって、安心させられる一番の居場所でありたいから。
俺にも来碧さんを守らせて。
ありったけの想いを全部詰め込んで
痛ましい腿へ何度も何度も口付けた。
そして、そのまま中心へと角度を変えていく──。
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