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俺の精液を含んだ腹を指さされ、罪悪感でいっぱいの筈の心はどういうわけか喜んでもいるようで。 自身の、自身にコントロールできない部分はΩ性から来る本能だけだと思っていた考えがいとも容易く崩れ去る。 俺の全てを受け入れてくれる綾木の穏やかな笑みに、悔しくも泣きそうになってしまった。 が、勿論それはほんの一瞬の事で。 その全ては指の下で主張を強めるそれ…綾木の昂ぶりによって掻き消されるのだが。 「……なぁ、綾木さん…?」 「うん?」 「つ、辛いだろ…それ、ずっと……っ」 俺に刺激を与えている間も、一向に自分の方はないがしろにしていた綾木。 既に張り詰めた状態のまま、俺ばかりに快感をくれて。 はじめに比べ、更に切羽詰まった様子を見せつけるそれにチクリと胸が痛んだ。 もし、俺がもう少しこういった行為に慣れていれば。 余裕を持てていれば、彼のものも同じように気持ちよくさせられたんじゃないかって。 「…来碧さんに、気持ちよくなってほしかっただけだから」 「だけど…」 縋る様に腕を掴めば、綾木はそのまま俺を胸の中へと引き寄せた。 普段は丸く曲がった猫背の癖に、こういう時だけ頼もしく包み込んでしまえるのは狡い。 薄い胸から俺の鼓動が伝わっていくのはわかり切っていたが、それは彼にも言える事で。 忙しなく鼓動を繰り返すリズムに、嬉しさや気恥ずかしさ、様々な感情を混ぜ合わされて…息が苦しい。 腰に添えられていた手は、背骨を辿りスルスルと這い上がる。 もどかしさについ目を細めれば、狭まった視界に柔らかく微笑む彼が居た。 その手は襟足をそっと払い、消えない刻印に触れて。 「じゃあ、挿れてもいい?来碧さんの中……挿れさせて」 上手な誘い方も適した会話のキャッチボールの方法も知らない俺は、首振り人形さながら、声も出さずに頷くばかり。 こんな俺を受け入れ、全てを受け止めた上に抱えきれないほどの愛情を注がれて、拒むなどという選択肢が存在する筈ないのに。 こうして常に許しを乞う姿に、どこまでも綾木らしさを感じる。 無理やりにではなく、見返りを求めるでもなく、 ただ無償の愛ばかりをくれる彼の低姿勢は、骨の髄までもを蝕み、綾木以外を思い出す隙すら与えてもらえない。 ある種の牽制のようにも思えた。 「ゴムするから、ちょっと待ってね」 「……ぁ、」 俺だけに触れていた手が離れ、密着していた肌同士の僅かな隙間に風が抜ける。 春とは言うものの、まだ肌寒さを感じる夜の気温だ。 熱を分けてくれていたそれが少し遠ざかるだけで込み上げるのは、虚しさ、切なさと淋しさ。 同じ部屋の中に居るというのに、俺はいつからこんなにも貪欲になってしまったのだろう。

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