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第一章・6

 肉の後は牛乳を1パック全部飲み干し、健の食事は終了。  一緒に焼肉でも、と考えていた未悠の願いもかなわなかった。 (久しぶりに、誰かと食事ができると思ってたのにな)  そう考えていたのは、健のルックスにあった。  魅力的なのは、逞しい体つきだけではない。  一重瞼の目は鋭いが、笑うとやけに朗らかだ。  真っ直ぐに高い鼻梁に、薄い唇。  そして、その奥には発達した犬歯が見え隠れしていた。  自らをトラブルメーカーと言ってはばからない、危険な香りが確かにするが、その奥底には確かに優しさがのぞいているのだ。 (素敵な人。訳ありみたいだけど、きっといい人)  なぜだろう。  この人には、城嶋さんにはどんどん警戒心が薄れていく。  今まで自分の素性は、隠して生きて来た僕なのに。  健にバスルームを案内し、未悠は部屋着を用意した。  いつか伯父が訪ねて来た時に、と揃えていたのだ。  大きいサイズのものだが、それでも彼には丈が短いかもしれない。 「まさかこの部屋着を、出会ってから一日も経たない人が着ることになるなんて」  脱衣所に服を持って行くついでに、未悠はバスルームをうかがった。 「城嶋さん、大丈夫ですか? 傷口が開いたり、してませんか?」 「ありがとう、平気だよ。すっかりふさがってる」  まさか、と未悠は眉をひそめた。  さっきまで、多量に出血していた傷だ。  そう簡単に、ふさがるはずがない。  そんな未悠に、一つの疑惑が浮かんだ。

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