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第一章・7

「城嶋さん、ちょっと入ってもいいですか?」 「え!? ま、待って!」 「入ります!」 「うわぁ! ちょ、やめ……!」  バスルームに立ち入った未悠が、湯煙の向こうに見たもの。  それは、グレーの毛に覆われた、獣体だった。  二本の足で立ち、ヒトの姿こそしてはいるが、明らかに異形のそれだった。 「城島さん、やっぱり。あなたは、獣人だったんですね」 「バレたか」  月は、満ちてきている。  獣人の体力や運動能力は満月に最も高まるので、健の異常なまでの回復力はそれでうなずけた。 「傷を、見せてください」  それでも心配な未悠は、健の腹を探った。  毛をかき分けて見てみると、そこはすでに白く盛り上がり、完全にふさがっている。 「ね。大丈夫だから」  鼻づらが少し長く変形した健は、軽い口調で言った。 「良かった……」  未悠の言葉に、健は真顔になった。 (この子は、本当に心から私を心配してくれたんだ)  そう思うと、こちらの心も緩むというもの。  健は、自らの素性を明らかにした。

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