8 / 101
第一章・8
「私は、オオカミの獣人。ルポライターだ。ある事件を追っていて、暗殺者に刺された」
「危険な仕事なんですか」
「人身売買の証拠を掴もうとしててね」
どうやら相手は、思ったより大きいらしい、と健は腹を撫でた。
「全く油断してた。それほど雑踏に溶け込んでいながら、私を刺したんだ。敵ながら、天晴だよ」
幸い満月が近いので、この程度で済んだ、と健は笑う。
そんな彼の笑顔に、未悠はほっとしていた。
「あの。そんな大切なこと僕に話してくれて、ありがとうございます」
「いや、君もすぐに忘れてくれ。さっきも言ったけど、私に巻き込まれると困る」
部屋着、置いておきます。
そう言い残し、未悠はバスルームを後にした。
「オオカミの獣人、城嶋さん」
大きなため息をつき、未悠は頬を染めた。
「あの人になら、僕の秘密を話せるかもしれない」
ありのまま、全部。
生まれて初めての想いを、未悠は健に覚えていた。
ともだちにシェアしよう!