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第三章・2
「僕、自分以外の獣人に会うのは初めてなんです。だから何だか、嬉しくて」
ミルクティーの入ったカップを手でいじりながら、未悠は語った。
伯父が自分を疎んじるのは、オメガでありながら獣人である未悠の奇異さにあること。
他ならぬ弟の息子であるので、仕方なく保護者になったこと。
自分の子らと交えたくなかったため、未悠をマンションに独り放り込んでしまったこと。
「伯父さん、僕のことが嫌いなんです」
あんなに優しかった伯父が、未悠の正体が獣人と知った途端に邪険になった。
少しずつ、ぽつりぽつりと話す未悠に、健は彼の強い孤独を感じた。
「だから、同じ獣人の私に、肌を許したのかい?」
「はい」
参ったな、と健は眉尻を下げた。
「ごめん。昨夜、スキン着けなかったよ」
「大丈夫です。僕、発情期まだですから」
でも怖い、と未悠は言う。
オメガで、しかも獣人だったら。
「発情したら、性欲が抑えきれなくなって。誰に盛るか解りません」
だから。
「だから、初めての人は。城嶋さんみたいに素敵な人を……」
「初めてだったの!?」
はい、と頬を染める未悠に、健は頭を抱えた。
何と言う、迂闊!
「まさか、初めてを奪っちゃうなんてなぁ」
こんなおじさんで、良かったの?
「私は、齢200歳を越すオオカミだよ? ヒトの姿では、30代だけど」
いや、18歳の少年から見れば、30代も立派なおじさんだろう。
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