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第三章・5

 健と別れてから、三日。  未悠は学校の植物園にいた。  ていねいに面倒を見てくれる者のない、少し荒れた植物園だ。  ところが今日は、そこにモスグリーンの作業着を身に着けた業者が一人いた。 「こんにちは」  育ちのいい未悠は、自然にその男にあいさつをしていた。  男は黙って会釈をしたが、その姿に未悠は驚いた。 「城嶋さん!?」 「小咲くん!?」  なぜ、どうして! 「城嶋さん、ルポライターだったんじゃ」 「取材という名の、潜入捜査さ」  二人は、園内のベンチに腰掛けた。  健はサーモスに入った温かなコーヒーを、未悠に振舞った。 「ミルクティー派の君には、苦いかもしれないけれど」 「いただきます」  熱くて舌先を少し火傷してしまったが、コーヒーはいい香りだった。  上質の苦みが、口いっぱいに広がる。 「おいしいです」 「良かった」  ほっと一息ついたところで、未悠は身を乗り出した。

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