24 / 101

第四章・2

「今夜は、火を通してから食べてください」 「生の方が……」 「お願いです。僕と同居を始めたお祝い、させてください」  鍋には、良い香りのすき焼きが煮えている。 「はい、城嶋さん。取ってあげますね」  未悠は取り皿に、肉をたくさん盛った。 「私はネギが苦手で……」 「野菜も摂らなきゃ、体に悪いです」  その世話女房ぶりに半ば呆れながらも、あとの半分は嬉しい健だ。 「ありがとう。いただきます」  こんな生活を、夢見たこともあった。  叶わないと知りながら、求めたことも。 「美味い。小咲くんの味付けは、私の口に合うよ」 「ホントですか!?」  僕、嬉しいです。  そして、少し怖いです。 (このぬくもりに、はまり切っちゃダメなんだ。城嶋さんは、いつかはいなくなっちゃう人なんだから)  しかし、彼の笑顔は温かすぎた。  未悠は、もう後戻りできない道を、歩み始めていた。

ともだちにシェアしよう!