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第四章・3
食後のお茶を飲みながら、未悠は思っていたことを切り出していた。
「城嶋さん。僕のことは、未悠って呼んでくれてもいいですよ」
「家主の名前を呼び捨てするのは、気が引けるなあ」
「僕、城嶋さんのことを、健さんって呼んでもいいですか?」
照れるな。
恥ずかしいな。
「健さん、か。健、でいいんだけど」
「目上の人は、呼び捨てにできません」
これまで、深い仲になった相手は何人かいた。
誰もが明るい笑顔で、健、と呼んでくれた。
全て、引き裂かれるように別れて行ったが。
「じゃあ、未悠。お茶のお代わりをくれるかな」
「はい、健さん」
健は、瞼をそっと閉じた。
嬉しそうに微笑む未悠を、見ることができなかった。
(やがては、また離れる運命なんだ)
なるべく早く、事件を解決させなくては。
(未悠が、巻き込まれる前に)
渋い顔で、苦いお茶を、飲んだ。
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