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第四章・5

 健の毛皮は、思いのほかしっかりしていた。  指で梳くと、解る。  長い毛と短い毛、両方が生えているのだ。  耳は尖り、耳介にも毛が生えている。  手を取ると、その指は露わだ。  だが爪が鉤状に伸び、確かな戦闘力を見せていた。  ヒトで言う尾てい骨からは、尾が続いている。 「尻尾、邪魔じゃないですか? 服を着てるときに」 「要らないときには、出さなければいい」 「そんなことが、できるんですか?」 「長く生きていれば、獣体もコントロールできるようになるよ」  そこまでで、健は未悠の髪に触れた。 「今度は、君の番。見せてくれるか?」 「はい」  未悠は瞼を閉じ、わずかに上を向いた。  するとたちまち産毛が長く伸び、その裸身を覆った。  未悠は、しなやかな人猫へと変化した。  形のいい、桃色の耳。  白く輝く、毛皮。  細く伸びた、長い尾。 「……美しい」 「恥ずかしいです」  伯父は、化け物だと罵ったこの体。  美しいと称えてくれる人が、現れるなんて。

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