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第四章・6
バスタブの中で、二人はうっとりと時を過ごした。
互いに、本性を隠さなくても構わない開放感に、浸った。
「そろそろ出ないと。のぼせそうだ」
「じゃあ、100まで数えましょう」
そんな甘いやり取りも、心地よい。
健は、久々のぬくもりに照れていた。
未悠は、初めてのときめきに目覚めていた。
バスタオルで体を拭く時は、ヒトに戻った二人だ。
さすがに全身毛に覆われていては、タオルがいくらあっても足りない。
「健さん、背中拭いてあげます」
「ん? ありがとう」
にこにこと、ご機嫌な未悠だ。
その胸は、嬉しさに膨らんでいた。
(今日からこうやって、健さんと暮らせるんだ!)
確かに、別れの来る時を思えば影が落ちる。
それでも、あまりある希望と期待が、未悠の心に輝きをもたらしていた。
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