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第六章 ささやかな幸せ

 朝、未悠が珍しく我がままを言った。 「ああ、学校に行きたくないなぁ」 「学生は、勉強しなきゃ」  でも、と未悠は健に乗り出す。 「もう周りはすっかり受験モードに入ってて。僕は進学の予定が無いから、置いてけぼりなんです」 「伯父さん、大学には行かせてくれないのか?」  それには、複雑な表情の未悠だ。 「はっきりダメ、とは言われてないんですけど。僕、これ以上は伯父さんのお世話になりたくないんです」 「じゃあ、就職するの?」 「それもまだ、決めてなくって」  学校に行けば、進路指導の先生にうるさく言われる、と未悠はため息をついた。  そんな彼の姿に、健は明るく言った。 「私なら、進学するけどな。キャンパスライフ、というのを味わってみたい」 「でも、伯父さんが……」 「しばらく会ってないんだろう? 伯父さんも、今は気持ちが変わってるかもよ?」  未悠の獣体姿を見て、化け物と罵り冷たくなったという、伯父。  常人ならば仕方のない反応だ、と健は思っていた。  気休めとは解っていたが、未悠をそうして慰めた。  結局彼は渋々ながらも登校し、健も抱えた事件について探り始めた。

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