40 / 101
第六章・2
被害者、つまり行方不明者の身元は、どれもが希薄だ。
施設に入っている子、夜遊びなどが頻繁な子、親の不在が多い子……。
地に足のついている家庭環境に育っている子は、いない。
「そして、そんな子たちに声をかけ、仲良くなったところでさらう、か」
健は、タブレットを見ながら眉根を寄せた。
歓楽街での聞き込み、彼らが最後に目撃された場所などを元に判断すると。
「やはり、仁道会が怪しい」
その口は、この街の指定暴力団の名をつぶやいた。
そっと、腹に手を当てる。
そう考えると、こうも見事に自分に傷をつけて去って行く暗殺者が現れるのも、うなずける。
普通の人間ならば、死んでいるところなのだ。
「私が生きていると知ると、次の手を打ってくるかもな」
この仕事、早急に片付けなくては。
そこで健は、未悠を思った。
彼がこちらサイドにいると解ると、確実に魔手を伸ばしてくるだろう。
「あと一つ、確実な情報が欲しい所だ」
どうやって、敵を追い詰めるか。
難しい顔をして唸ったその時、玄関のドアが開く音がした。
ともだちにシェアしよう!