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第六章・4
「エビに豚肉。松の実にオイスターソース。チンゲン菜に青ネギ!」
「私はネギが苦手で……」
「好き嫌いはいけませんよ?」
そして最後に、二人は酒類のコーナーへやって来た。
「健さん、紹興酒飲みますか?」
「ああ、もらおうかな」
「ザラメ、入れます?」
「私は、ストレートで」
こうして何気ない会話を楽しんでいると、健はもう事件のことなど忘れてしまう。
何て幸福なんだ。
これが、日常の味なんだ。
長く味わったことのない、穏やかな日々。
そして、この傍にいる人を。
未悠を、少しだけ幸せにしてあげられたら、どんなにいいか!
「健さん、どうかしたんですか?」
「ああ、すまない。少し、ぼんやりしてた」
軽く頭を振って、健は周囲に気を配った。
大丈夫、悪意の波動は感じられない。
怪しい臭いは、しない。
現実に戻り、未悠に危険がないか確認する健だった。
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