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第六章・5

「ね、健さん。僕も紹興酒、飲んでみたいな」 「ダメダメ。お酒は20歳になってから」  ケチ、と笑顔で頬を膨らませる未悠が、やけに可愛い。  彼が腕を振るった中華料理を前に、健は紹興酒を傾けていた。  未悠が驚いたのは、健がまるで水のようにそれをあおるところだ。  あっという間に、ボトルが半分になってしまった。 「でも、全然酔いませんね」 「もうすぐ満月だからね。アルコールも効かなくなってる」 「じゃあ、僕も大丈夫かも!」 「そういう発想か!?」  一口だけ、とせがまれねだられ、健は以前やったように、酒を少し口に含んだ。 「健さん……、んぅ……」  口移しで、少しずつもたらされるアルコール。  未悠は、その行為に酔った。  健に与えられるものなら、なんでも良かった。  たとえ毒でさえ、甘露になったに違いない。  うっとりと唇を離し、頬を染めてうつむく未悠。  初々しさを失わない仕草に、健は嬉しくなった。 「未悠、好きだよ」 「……!」  すると突然、未悠は席を立ちリビングへ走って行った。

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