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第七章 満月の日に

 明日が満月か、と健は額を抑えていた。 「できれば、満月前後でヤマを片付けたかったが」  月が満ちている時ならば、極道が拳銃を持ち出してきても勝てる自信があった。  弾丸をもよけることができるし、当たったとしても致命傷を免れることができる。  もちろん、ナイフで刺されても平気だ。   刃の方が、逆に折れる。  唸っていると、隣で寝ているはずの未悠がささやいた。 「健さん。僕、囮になります」  は、とその顔を見ると、彼は目を閉じたまま話している。  手は、しっかりと健の腕を握ったまま。 「事件の解決には、それが一番の早道です」 「滅多なことを言うな」 「でも、健さんなら。健さんほどの人が、囮を使う手を考えなかったとは思えません」 「未悠」  図星だった。  未悠を仁道会の組員の前にちらつかせれば、簡単に食いついてくるだろう。  考えなくは、なかった。  ただ、そんな危険なことを。 「未悠を、そんな危ない目に遭わせるわけには、いかない」  はっきりと言う健の腕を、未悠は強く握った。

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