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第七章・3

 翌日、健の言う通り学校へ向かった未悠だったが、どうしてもつまらない。  成績は振るわない方ではなかったが、模試でいい点を取れば教師がやたら進学を推してくる。 『小咲。将来のことを思えば、大学に進む方が何かと有利だぞ?』 (将来のこと、かぁ) 『何か、就きたい職業はないのか。専門学校という道もある』 (健さん専属の、シェフになりたいな)  進路指導室でそんな時間を過ごし、出て来た時はもう夕暮れ時だった。 「急いで帰って、夕食作らなきゃ」  健さん、お腹すかしてるかな。  待ってるだろうな。  何か、おみやげを買って帰ろう。  未成年なので、酒類は購入できない。  そこで未悠は、肴になる珍味を買おうと思った。 「健さん、チーズとか好きかな」  先日二人で入ったマーケットでチーズを選んでいると、後ろから声を掛けられた。 「どのチーズが、おいしいですか? あんまり詳しくなくて」  見ると、背の高い若い男性が立っている。  スーツを身に着けた、会社員風の優男だ。  今夜の晩酌にと思って、チーズを買いに来たのだろう。  未悠は、親切に男と話を始めた。

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