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第七章・4
「癖のないものだと、この辺りのフレッシュタイプで。ナッツとか入ってると、食べやすいかもしれません」
「なるほど」
「こっちの白カビタイプだと、少し風味が濃厚です」
「白カビ? カビが生えてるの!?」
「人体には無害なので、大丈夫ですよ」
すごいな、と男は未悠を褒めた。
「詳しいんだね。お勧めを、選んでくれないかなぁ」
「いいですよ」
そこで未悠は、男にドライフルーツの入ったクリームチーズと、カマンベールを勧めた。
「ありがとう。ここには、よく来るの?」
「はい。近くに住んでるので」
「新見(にいみ)と言うんだ。また会えるといいな」
「僕は、小咲です」
清潔感のある身なりと人懐っこい笑顔の新見に、未悠は警戒心を解いていた。
だから、別れた後で、彼がひどく鋭い目つきになったことには、気づかなかった。
「あの子は、オメガだな。可愛いし、知的だ。いい商品になる」
そして、そっと後をつけ、その姿を写真に収めたり、住むマンションを探ったりした。
新見は、仁道会の息のかかった者だったのだ。
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