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第七章・6
ベランダに出て、健と未悠は月を仰いだ。
きれいな、円い月だ。
冷たい大気の中、煌々と輝いている。
「……吠えたくなるなぁ」
「健さんは、オオカミですからね」
「未悠は、月に向かって鳴きたくならない?」
「たまに、心の奥から何かの衝動が」
だよね、と未悠の肩を抱く健は、少しワインの香りがする。
その匂いに当たったのだろうか。
未悠は、軽いめまいを覚えた。
(何か、体が変)
先ほど言ったことではないが、自分の奥底から衝動が突き上げてくる。
呼吸が、速くなる。
鼓動が、激しくなる。
「健さん、僕……」
「未悠?」
ああ、ダメ。
健さんが、好き。
抑えられない。
「健さん、愛してる!」
未悠は、健の分厚い体にむしゃぶりついていた。
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