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第八章・3

「んぁ、健さん……」 「満足したかい?」 「どうしよう」 「?」 「どうしよう、こんなに。こんなに、愛して……」  はぁはぁと荒い息が、次第に鎮まっていく。  未悠が寝入ってしまうまで、健はその髪を、肌を撫でていた。  濡れた体を清めてやっても、未悠はぐっすり眠ったまま起きない。 「どうしよう、か」  それは私も同じことだ。  どうしよう。 「深入りしちゃったなぁ」  外からの月の光が、明るい。  満月だ。 「結局、特別な夜は、大切な人と過ごすことになってたんだな」  一週間前の健は、この満月に合わせて事件の核心を突くつもりでいたのだが。  未悠はすっかりリラックスして、獣人の本性を現している。  彼の体は雪のように白い、柔らかな毛に覆われているのだ。  それを見て、健も獣化した。  こちらは、完全獣化だ。  すっかり四つ足のオオカミの姿になって、未悠に寄り添った。  喉の奥をゴロゴロ慣らしている未悠に併せて、唸った。  甘く優しく、唸った。

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