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第八章・6

 病院に行った帰りに、健と未悠はいつものマーケットに立ち寄った。 「肉買おう、肉」 「たまには、お魚も食べたいです」  そんな風にじゃれ合いながら買い物をしていると、未悠はふと視線を感じた。 「やあ、小咲くん」 「あなたは確か……。新見さん」  また会えたね、と新見は笑顔で手を振った。 「こないだのチーズ、美味しかったよ。ありがとう」 「いいえ。新見さんも、お買い物ですか?」 「そんなところ。また、ね」 「はい……」  フレンドリーな割には、さっさと立ち去っていく新見だ。  健は、彼に何か特別な気配を感じ取った。 「未悠。新見さん、って何者?」 「以前、チーズを選んであげたんです」 「それだけ?」 「嫌だなあ。それだけですよ」  未悠はてっきり健が妬いたのだと思い、ちょっぴり嬉しくなった。 (僕、悪い子だな。健さんのジェラシーに気を良くするなんて)  そんな未悠だから、後はご機嫌で買い物を続けたが、二人の男は胸をざわめかせていた。

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