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第八章・7
未悠に合わせて魚の目玉だの見ている健だが、心の中では新見のことを考えていた。
(ビジネスマン風に装ってはいるが、どこか怪しい)
何だろう。
身のこなしか?
その目つきか?
とにかく警戒した方がいい、と健の本能はシグナルを発している。
「未悠。新見さんは、ここによく来るのか?」
「さあ。会うのは二回目ですけど」
「今度から、買い物は別の店に変えよう」
「えっ?」
ただのジェラシーにしては慎重すぎる健の言葉に、未悠は不安になった。
「どうかしたんですか?」
「え? あ、いや、なに」
新見に危険な匂いを感じた、とは言いにくい。
健は、軽くごまかした。
「大切な未悠を、あの人に取られたくないからね」
「そんな。僕は……」
(僕は、健さん一筋なのに)
照れて赤くなった未悠の髪を、健はくしゃりとなぶった。
後々思えば正直に、危険だ、と言っておけば良かったのだが。
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