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第九章・2

「今、帰り? ちょうどよかった。乗らないか?」 「そんな。悪いです」  新見は、ナビシート側のドアを開けた。 「鶴丸デパートで、世界のチーズフェアがあってるんだ」 「そうなんですか?」 「先だってのお礼に、連れて行ってあげる」  未悠は、おみやげのモンドールを喜んでおいしそうに食べていた健を、思い出した。  鶴丸デパートは、老舗の高級百貨店だ。  珍しいチーズも、たくさん置いてあるに違いない。 「じゃあ、お願いします」 「何か、買ってあげよう」  ナビシートに乗り込み、シートベルトを締める。  未悠を拉致した新見の車は、そのまま走り出した。

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